最終更新日:2025年08月28日
運送業界に転職したら給料は上がるのか…将来の収入について不安を感じている方も多いでしょう。本記事では、公式な統計データをもとに運送ドライバーの平均給料水準やその推移をわかりやすくお伝えします。給料が上がりにくい背景や国の改善策、そしてドライバーとして収入を上げるためのポイントや今後の展望について、一緒に見ていきましょう。
まず、運送業界(特にトラックドライバー)の給料水準がどの程度か見てみましょう。厚生労働省の統計によれば、トラックドライバーの平均年収は400万円台後半程度となっており、全産業の平均と比べると低めです。例えば令和3年(2021年)のデータでは、大型トラック運転者の平均年収は約463万円で、全産業平均の約489万円に届いていません(※1)。中小型トラック運転者では平均約431万円とさらに低く、全体として全産業平均より5~10%程度低い水準にとどまっていました(※1)。その後、令和5年(2023年)の同調査では大型トラック運転者で約485万円、中小型トラック運転者で約437万円と上昇しています(※2)。とはいえ、2024年の道路貨物運送業における年間所得は約459万円で、全産業平均より13%低い水準にとどまっており(※3)、運送ドライバーの賃金水準は依然として他業種より低い傾向が見られます。
このように、運送ドライバーの賃金は他業種に比べて低めで、長時間労働であるにもかかわらず時間当たりの賃金が割安な状況が続いています。
参考URL
・※1出典:厚生労働省「令和3年 賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html
・※2出典:厚生労働省「令和5年 賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html
・※3出典:国土交通省「トラック運送業の現状」(自動車局資料) https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf
では、なぜ運送業では給料が上がりにくいのでしょうか。その背景には、業界特有の構造的な問題や商習慣が関係しています。主な理由をいくつか挙げてみます。
・長時間労働に依存した賃金体系: 長年、トラックドライバーには労働時間の上限規制が緩やかで、残業が常態化してきました。結果として「基本給は低めでも長時間働けば稼げる」という賃金体系になりがちでした。2024年からは法改正で年960時間の時間外労働上限が適用され、こうした働き方の見直しが始まりました(※4)が、それ以前は長時間労働が前提の業界だったのです。
・多重下請け構造による収入の目減り: 運送業界では、大手の元請会社から下請・孫請へと仕事が回される多重下請け構造が存在します。その過程で中間マージンが差し引かれるため、最終的にドライバーに支払われる運賃(収入)は圧縮されてしまいます(※5)。現場で汗を流すドライバーほど十分な取り分が得られにくい構造と言えます。
・安値受注と弱い価格交渉力: トラック運送業者の多くは中小企業で占められており、荷主(依頼主)に対して運賃の値上げ交渉がしにくい立場にあります。仕事を確保するために競合他社と価格競争を強いられ、適正な運賃を請求しづらい商習慣が根強いのです(※5)。その結果、人件費を十分に転嫁できず、ドライバーの給料も上げにくくなってしまいます。
参考URL
・※4出典:厚生労働省「自動車運転者の働き方改革ポータルサイト」 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/ ・※5出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001888325.pdf
深刻な人手不足や長時間労働の是正に向け、政府や業界でもさまざまな改善策が講じられています。もし対策を講じない場合、2030年には輸送能力が34%も不足すると指摘されており、一人当たり年間125時間の荷待ち・荷役時間短縮が必要とされています(※6)。こうした物流の効率化策の推進は、長時間労働の是正だけでなくドライバーの賃上げにもつながると期待されています(※7)。
・労働時間の効率化による生産性向上: 荷主の協力による荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化など、生産性向上の取り組みが進められています。無駄な待機時間を減らし労働時間を短縮することで、ドライバーの労働環境を改善すると同時に、人件費の効率的な活用によって賃金水準を引き上げる狙いがあります(※8)。
・標準的な運賃制度の導入・改定: 2018年の法律改正により創設された「標準的な運賃」制度にも注目が集まっています。2024年3月には標準的運賃の水準が一律8%引き上げられ、従来運賃に含まれていなかった荷役作業等の対価も上乗せできるよう制度が見直されました(※9)。この新たな標準的運賃により、ドライバーの賃上げ原資となる適正運賃を収受できる環境整備が進められています。国も業界・荷主に対し、この標準運賃の活用を促しているところです(※9)。
参考URL
・※6出典:国土交通省・経済産業省ほか「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」2022年9月 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/001_02_00.pdf
・※7出典:厚生労働省白書「労働経済の分析(令和6年版)」 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/24/
・※8出典:厚生労働省「物流情報局(荷主の皆さまへ)」 https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/shipper
・※9出典:国土交通省「新たなトラックの標準的運賃を告示しました」報道発表 令和6年3月22日 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000294.html
最後に、ドライバー個人の取り組みで収入を上げるためのポイントをご紹介します。業界全体の改善策だけでなく、自身の工夫次第で賃金アップを実現できる余地もあります。
・夜勤・長距離による手当の活用: 企業によっては夜間勤務や長距離運行に割増手当や出張手当が支給される場合があります。また繁忙期に特別手当が出るケースもあるでしょう。こうした手当が支給される業務に積極的に取り組めば、直接的に収入アップにつながります。
・資格取得とキャリアアップ: 現場で経験を積んだ後に運行管理者や配車担当など管理職へのキャリアパスを描くのも一つの方法です。運行管理者の資格を取得しておけば将来的に管理職手当がつくポジションに昇進できる可能性もあり、結果的に生涯収入の底上げにつながります。
・会社選びと労働環境の見極め: 給料アップを目指すなら、勤める会社の制度や企業風土を見極めることも重要です。運送会社ごとに給与体系や各種手当の充実度、残業代の支払い状況などは異なります。就職・転職先を選ぶ際には、基本給の額だけでなく時間外手当の有無や一日の拘束時間の管理状況などを確認しましょう。例えば、国土交通省が創設した「働きやすい職場認証制度」というものがあります(※10)。これは労働環境改善に積極的な運送事業者を認証する制度で、この認証を取得している会社はドライバーの待遇改善に力を入れていると考えられます。求人票を見る際には各社の待遇改善への取り組み状況をチェックし、できるだけ労務管理がしっかりした会社を選ぶことも長期的に見て収入を安定して伸ばすポイントです。入社後も、自分の希望や努力が正当に評価されているかを見極めながら、必要に応じて社内で待遇改善の相談をしたり、より条件の良い会社への転職を検討することも選択肢の一つです。
以上のようなポイントを意識することで、運送ドライバーとしてのキャリアの中で少しずつ収入を向上させていくことが可能です。特に資格取得や特定分野の経験は目に見えるスキルとなり、市場価値を高める効果があります。
参考URL
・※10出典:国土交通省自動車運転者ポータルサイト「働きやすい職場認証制度」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000030.html
運送業界の給与は現状では全体平均より低い水準にありますが、今後に向けて改善の兆しも見え始めています。政府はドライバーの賃上げを重要課題に掲げ、今後もあらゆる手段を講じて待遇向上に取り組んでいく方針を示しています(※11)。実際、標準的な運賃の引き上げや労働時間規制の施行など、賃金アップにつながる施策が次々と実行に移されています。これらの施策や深刻化する人手不足を背景に、運送各社も優秀な人材を確保するため給与水準を引き上げざるを得なくなると考えられます。今後数年でドライバーの平均年収が上向いていく可能性は十分にあるでしょう。
もっとも、課題がすべて解決したわけではなく、中小企業におけるコスト負担や荷主側の意識改革など時間のかかる問題も残っています。それでも、労働環境の改善と賃上げに向けた動きは着実に前進していることは確かです(※7、※11)。働き方改革の定着や適正運賃の普及が進めば、運送業界はこれまでの「長時間労働・低賃金」のイメージを脱し、安定して長く働ける職場へと変わっていくことが期待できます。
最後に、読者の皆さまへの提案です。運送業界への転職をお考えの方は、ぜひ本記事でご紹介したデータやポイントを参考にしてみてください。業界全体の動向を把握しつつ、自分自身のスキルアップや資格取得にも取り組むことで、将来的に大きなリターンを得ることができます。待遇改善の流れに乗りつつ努力を重ねれば、運送ドライバーとして給料が上がっていく可能性は十分あります。安全と健康に気を配りながら経験を積み重ね、ぜひ長く活躍できるドライバーを目指してください。
参考URL
・※11出典:国土交通省関東運輸局「トラック運送事業の現状」 https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000319846.pdf
タクシーや配送、トラックドライバーへの転職をお考えなら、GOジョブにお任せください。
経験豊富な専門エージェントがあなたのご希望をじっくりとお聞きし、一般には公開されていない求人も含めて、最適なお仕事をご提案いたします。
応募から入社まで、すべてのサポートを無料で受けていただけます。
登録は簡単に1分で完了しますので、お気軽にご相談ください。