長距離トラックの給料相場・内訳・求人票の見抜き方

最終更新日:2026年04月08日

長距離トラック 給料

長距離トラックは稼げると言われる一方、歩合や運行手当、残業・深夜の扱いで手取りは大きく変わります。「求人票の月給は本当に固定?」「拘束が長いのに割増は正しく払われている?」と不安を感じている人も少なくないでしょう。

この記事では「長距離トラックの給料」を、公的統計(賃金構造基本統計調査)と法令(割増賃金)など一次情報だけで整理します。相場の見方→内訳→制度→求人票チェックの順に読み進め、ご自身の給与明細や求人票と照らして判断材料を作ってみてください。

長距離トラックの給料相場を一次情報でつかむ(統計の見方)

長距離単体の統計は出にくいため、賃金構造基本統計調査の「職種別」データで複数の指標を押さえるのが、相場を見誤らない安全な方法です。この章では、参照すべき一次情報と、指標の読み分け方を整理します。

長距離トラックの給料は"長距離"で統計が分かれにくい:相場はこう読む

「長距離トラックの給料はいくらか」と聞かれたとき、ネット上では「年収○○万円」という数字が並びます。しかし、公的統計では「長距離トラック運転手」という単独のカテゴリが設けられているわけではありません(※1)。

厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査は、職種小分類で賃金を集計しています(※1)。たとえば「営業用大型貨物自動車運転者」「営業用普通・小型貨物自動車運転者」といった分類です。車両の大きさや営業用・自家用の区別はあるものの、「長距離か地場か」という運行形態では直接切り出されにくい構造になっています。

そのため、長距離トラックの給料相場を知りたいときは、「大型貨物自動車運転者」など該当する職種の賃金水準をベースにしたうえで、長距離に特有の手当(運行手当、宿泊手当など)や時間外・深夜の割増がどれだけ上乗せされるかを別途整理する必要があります。

「長距離=年収○○万円」とひとくくりに言い切ることは難しく、統計の読み方と給料の内訳を分けて考えることが大切です。

長距離トラックの給料相場に使う一次情報は「賃金構造基本統計調査」(表番号の見方)

賃金構造基本統計調査は、厚生労働省が常用労働者5人以上の事業所を対象に実施する調査です。調査事項には「所定内実労働時間数」「超過実労働時間数」「きまって支給する現金給与額」「超過労働給与額」「賞与、期末手当等特別給与額」などが含まれています。なお、「所定内給与額」は調査票からの直接収集値ではなく、きまって支給する現金給与額から超過労働給与額を差し引いた算出値として統計表に掲載されます。

この調査の結果は、政府統計の総合窓口であるe-Statで公開されています(※1)。2025年(令和7年)調査の一般労働者・職種別データは、2026年3月24日に公開されました(※3)。

長距離トラックの給料相場を押さえたいときに参照すべき表番号は以下のとおりです。

表番号

内容

給料相場を見るときの使い方

表番号1

職種小分類別の賃金指標(きまって支給する現金給与額、所定内給与額、年間賞与等)

該当する運転職の賃金水準を確認する基本データ(※3)

表番号7

職種別の賃金指標(別の切り口)

表番号1と合わせて複数角度から確認する(※1)

表番号1では、職種小分類ごとに「きまって支給する現金給与額」「所定内給与額」「年間賞与その他特別給与額」が掲載されています(※3)。ここから該当する運転職(営業用大型貨物自動車運転者など)の行を抽出すれば、統計上の賃金水準が分かります。

なお、厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)でもトラックドライバーの年収や求人賃金の概況が紹介されています(※4)。ただし、job tagの数値は掲載タイミングや出典年次にばらつきがある場合もあるため、最新の賃金水準を正確に把握したいときは賃金構造基本統計調査の表番号を直接参照するのが確実です。job tagは仕事内容や運行イメージをつかむ補助として活用するのがよいでしょう。

長距離トラックの給料で混同しやすい指標:所定内給与額/きまって支給/年収(賞与)

統計を見るときに混乱しやすいのが、「所定内給与額」「きまって支給する現金給与額」「年収」の違いです。これらを混同すると、相場を実態より高く(あるいは低く)見積もってしまいます。

指標名

意味

長距離トラックの給料での注意点

所定内給与額

所定労働時間内の給与(基本給+所定内手当)。残業代や深夜手当は含まない

「月給の固定部分」に近いが、手当の扱いは会社ごとに異なる

きまって支給する現金給与額

所定内給与額+超過労働給与額(時間外・休日・深夜の割増賃金)

実際の月収に近い水準だが、変動要素(超過分)を含む

年収(年間賞与含む)

きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額として算出

賞与の多寡で差が出る。賞与がゼロの会社と年2回支給の会社では年収に大きな開きが出る

この表からわかるように、「所定内給与額」だけを見ると残業代・深夜手当が入っていないため相場を低めに感じますし、「きまって支給する現金給与額」だけでは賞与が含まれないため年収が実態と離れることがあります(※2)。

長距離トラックは運行が長時間にわたることが多く、超過労働給与額(残業・深夜の割増分)が月収に占める割合が相対的に大きくなりやすい運行形態です。そのため、「所定内給与額」だけで給料を判断するのではなく、複数の指標を組み合わせて見ることが大切です。

また、求人票に載っている「求人賃金(月額)」と、統計から算出される「年収」は、そもそも指標が異なります。この違いを意識するだけでも、数字に振り回されにくくなります。

指標

何を表しているか

注意点

求人賃金(月額)

企業が求人票で提示する月給の範囲

固定残業代や手当が含まれている場合がある。上限値は実現しにくいケースも

年収(統計)

賃金構造基本統計調査から算出した年収水準

職種全体の平均であり、個別の運行形態(長距離・地場)では直接分かれない

この章のまとめ

  • 長距離トラックの給料を公的統計で見るなら、賃金構造基本統計調査(e-Stat)の該当職種の行を参照するのが基本
  • 「長距離」単独の統計区分は存在しにくいため、「職種別の賃金水準+長距離特有の手当・割増」で分けて考える
  • 所定内給与額、きまって支給する現金給与額、年収(賞与含む)の3つの指標は混同しないこと
  • 求人票の「月給」と統計の「年収」は指標自体が異なる点にも注意

次の章では、その「給料」を構成する内訳(基本給・手当・歩合・賞与)をさらに分解して見ていきます。

長距離トラックの給料の内訳を分解する(基本給・手当・歩合・賞与)

給料は基本給だけでなく、手当や賞与も含めた「賃金」として設計されています。求人票に「月給30万〜40万円」と書いてあっても、その中身がすべて固定給なのか、歩合や残業代込みなのかで実態はまったく違います。ここでは、法令の定義と統計の調査項目に沿って、給料の「内訳」を分解します。

長距離トラックの給料の内訳は「賃金」の定義から押さえる(手当・賞与も含む)

まず、法律上の「賃金」とは何かを確認しておきます。労働基準法では、賃金を「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義しています(※5)。

つまり、基本給だけでなく、運行手当、歩合給、深夜手当、賞与なども、すべて法律上は「賃金」に該当します。求人票の「月給」がどこからどこまでを含んでいるかは会社によって異なるため、「何が固定で、何が変動か」「賞与は別か込みか」を自分で切り分ける必要があるのです。

長距離トラックの給料の内訳を整理すると、おおむね以下の枠組みで考えることができます。

内訳の項目

性質

長距離トラックでの特徴

根拠

基本給

固定

会社ごとに設計が異なる。月給制・日給月給制など形態もさまざま

労働契約・就業規則

運行手当・乗務手当

条件付き(変動しやすい)

長距離便・宿泊便・幹線便など運行形態によって加算される場合がある

会社の賃金規程

歩合給

変動

運送距離や売上に連動するケースがあり、月ごとの振れ幅が大きくなりやすい

会社の賃金規程

超過労働給与額(時間外・休日・深夜)

変動

拘束時間が長く深夜走行も多いため、月収に占める割合が大きくなりやすい

労基法第37条(※5)

各種手当(家族手当、住宅手当、無事故手当等)

固定〜条件付き

会社により支給の有無・条件が異なる

会社の賃金規程

賞与

変動(支給なしの場合もある)

年2回支給の会社もあれば賞与なしの会社もある。年収に大きく影響する

会社の賃金規程

とくに長距離(宿泊運行)の場合は、地場配送と比べて増えやすい手当や発生しやすい負担があります。以下の表で整理しておきます。

項目

長距離(宿泊運行)で増えやすい理由・内容

運行手当・長距離手当

宿泊を伴う便や幹線便に対して1運行あたりの手当が加算されるケースがある

宿泊手当

車中泊や宿泊を伴う場合に支給される場合がある。会社により金額・条件が異なる

深夜割増

夜間走行が多いため、22時〜5時の深夜割増が発生しやすい

時間外割増

拘束時間が長くなることで時間外労働が増え、割増賃金が上乗せされやすい

荷待ち・荷役の負担

拘束時間に含まれるが、手当が付かない場合もある。賃金設計によっては「働いているのに加算されない時間」になるリスクがある

生活面の負担

車中泊の頻度、家庭との両立、体力面の消耗など。給料には直接反映されないが、トレードオフとして考慮が必要

この表の手当・負担は会社ごとに扱いが異なります。「手当が出るかどうか」「どういう条件で出るか」は、求人票や面接で必ず確認したいポイントです。

長距離トラックの給料を統計で見るときの項目:きまって支給/超過労働給与額/賞与

賃金構造基本統計調査の調査事項は、上記の「内訳」と対応する形で設計されています(※2)。

調査では、「きまって支給する現金給与額」を「所定内給与額」と「超過労働給与額」に分けて集計しています。また、年に1回支払われる賞与やその他特別給与額も別途調査しています(※2)。

これを長距離トラックの給料の文脈に当てはめると、以下のように読み替えられます。

統計の調査項目

対応する内訳

読み方の注意点

所定内給与額

基本給+所定内の各種手当

残業代・深夜手当を含まない「固定部分」に近いが、手当の組み方で膨らみやすい

超過労働給与額

時間外・休日・深夜の割増賃金

長距離は相対的にこの部分が大きくなりやすい

年間賞与その他特別給与額

賞与・決算手当など

会社による差が大きく、ゼロの場合もある

統計上の数字は「平均値」であるため、個別の会社の給料とは当然ズレがあります。しかし、全体の水準を把握する「ものさし」としては有効です。

長距離トラックの給料がブレるポイント:固定と変動の切り分け

長距離トラックの給料が「稼げる月」と「稼げない月」で大きくブレる原因は、おもに以下の変動要素にあります。

  • 歩合給の振れ幅:運送距離や件数が月ごとに異なると、歩合部分が変動する
  • 超過労働給与額の変動:運行スケジュールによって残業・深夜の時間が変わるため、超過分が月ごとに異なる
  • 運行手当の有無:長距離便が多い月と少ない月で運行手当の加算額が変わる
  • 賞与の不確実性:業績連動型の賞与は支給額が読みにくい

家計を安定させたい人にとっては、「固定給(基本給+固定的な手当)の比率がどれくらいか」が重要な判断材料になります。固定部分が低く、歩合や超過労働給与に依存している会社ほど月収の振れ幅が大きくなるため、求人票や面接で「固定部分はいくらか」を必ず確認してください。

この章のまとめ

  • 給料の内訳は「基本給+手当+歩合+超過労働給与額+賞与」に分解できる
  • 長距離(宿泊運行)では運行手当・深夜割増が増えやすい一方、荷待ち負担や生活面のトレードオフもある
  • 賃金構造基本統計調査の項目(所定内給与額・超過労働給与額・賞与)と対応させると、統計の読み方が明確になる
  • 月収の安定度は「固定と変動の比率」で決まるため、求人票では固定部分を必ず確認する

次は、変動要素のなかでも不安が多い「割増賃金(残業・休日・深夜)」の最低ルールを確認していきます。給与明細を手元に用意しておくと、照らし合わせながら読めます。

長距離トラックの給料に直結する割増賃金(残業・休日・深夜)の最低ルール

割増賃金は労働基準法で支払い義務が定められており、最低割増率は条文と政令で明確に示されています(※5)(※6)。「残業代はちゃんと付いているのか」「深夜に走っているのに深夜手当は正しいのか」という不安に対し、法令のルールで判断の軸を作ります。

長距離トラックの給料が増える仕組み:割増賃金(残業・休日・深夜)の基本

労働基準法第37条は、使用者が労働者に時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合、通常の賃金に一定率以上の割増をして支払うことを義務づけています(※5)。

割増賃金が発生する場面を整理すると、以下のとおりです。

割増の種類

条件

根拠

時間外(残業)

法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えた場合

労基法第37条第1項(※5)

休日

法定休日(週1日または4週4日)に労働した場合

労基法第37条第1項(※5)

深夜

午後10時〜午前5時の間に労働した場合

労基法第37条第4項(※5)

長距離トラックの場合、夜間走行が日常的に発生し、拘束時間が長時間にわたることが多いため、時間外と深夜の割増賃金が給料に占めるウエイトが大きくなります。ここが「長距離は稼げる」と言われる理由の一つであると同時に、「正しく支払われているか」の確認が欠かせないポイントです。

長距離トラックの給料で要確認:時間外25%/休日35%(最低限度)

割増賃金の「最低限度」は、労働基準法第37条と関連する政令(平成6年政令第5号)で定められています(※5)(※6)。

割増の種類

最低割増率

根拠条文・政令

時間外(法定労働時間超)

25%以上

労基法37条1項+政令(平成6年政令第5号)(※6)

法定休日労働

35%以上

労基法37条1項+政令(平成6年政令第5号)(※6)

深夜(22時〜5時)

25%以上

労基法37条4項(※5)

月60時間超の時間外

50%以上

労基法37条1項ただし書(※5)

これらはあくまで「最低限度」です。会社が上回る率を設定していれば問題ありませんが、下回っている場合は法令に反することになります。

「月60時間超の時間外は50%以上」という規定は、以前は中小企業に猶予がありましたが、2023年4月からすべての企業に適用されています(※5)。長距離トラックの運行では、月の時間外が60時間を超えるケースも珍しくないため、この50%ラインは自分の給与明細で確認する意味があります。

長距離トラックの給料明細チェック:深夜(22〜5時)と時間外の重なりはどう考える?

深夜の時間帯(22時〜5時)に時間外労働をした場合、時間外の割増(25%以上)と深夜の割増(25%以上)が重なるため、合計で50%以上の割増率となります(※5)。

同様に、法定休日に深夜労働をした場合は、休日(35%以上)+深夜(25%以上)で60%以上の割増となります(※5)。

パターン

割増率の計算

最低合計

時間外+深夜

25%+25%

50%以上

休日+深夜

35%+25%

60%以上

月60時間超の時間外+深夜

50%+25%

75%以上

長距離トラックでは「深夜に走って、かつ時間外」という状況が日常的に発生します。この重複部分が正しく計算されているかどうかは、給与明細で確認したいポイントです。

給与明細チェックリスト(割増賃金の確認用)

#

チェック項目

確認のポイント

1

割増率の明記

時間外、休日、深夜それぞれの割増率が記載されているか

2

計算基礎(算定基礎)

基本給のみか、手当も含めて計算されているか。除外できる手当は限定列挙されている(※5)

3

所定内と所定外の切り分け

所定内給与額と超過労働給与額が明確に分かれているか

4

深夜と時間外の重複計算

深夜時間帯の時間外は50%以上で計算されているか

5

月60時間超の適用

月60時間を超えた時間外に50%以上が適用されているか

6

固定残業代の表示

何時間分をいくらで固定しているか明示されているか。超過分が別途支払われているか

7

手当の内訳

各手当が何に対して支給されているか、割増計算の対象かどうかが分かるか

この章のまとめ

  • 割増賃金の最低率は法令で決まっている(時間外25%・休日35%・深夜25%)(※5)(※6)
  • 深夜と時間外が重なれば最低50%以上、月60時間超なら50%以上(深夜重複で75%以上)
  • 給与明細では「率」「計算基礎」「所定内・所定外の切り分け」「固定残業の扱い」を確認する

次は、2024年4月以降に適用されている制度(時間外上限の年960時間、拘束時間の基準など)が長距離トラックの給料にどう影響するかを見ていきます。

2024年以降の長距離トラックの給料はどう変わる?年960時間と拘束時間の影響

2024年4月から、トラックドライバーを含む自動車運転業務に時間外労働の上限規制が適用されました。拘束時間の基準(改善基準告示)も見直されています。「必ず給料が下がる」とは断定できませんが、長時間労働に依存した稼ぎ方は制度上成立しにくくなっています。ここでは、制度の前提と、それを踏まえた求人比較のポイントを整理します。

長距離トラックの給料とセットで知るべき変更:時間外上限 年960時間

国土交通省の資料によると、2024年4月から自動車運転の業務に対して時間外労働の上限が年960時間と定められました(※7)。

これは一般の労働者に適用されている上限(年720時間)とは異なる基準ですが、それまで実質的に上限がなかった自動車運転業務にとっては大きな変化です。

項目

制度変更前

2024年4月以降

時間外労働の上限

上限の適用猶予(実質なし)

年960時間(※7)

年960時間を12か月で割ると、月あたり約80時間が一つの目安になります。それまで月100時間以上の時間外があった人にとっては、超過労働給与額が減る可能性があります。一方で、もともと月80時間以下の運行が中心だった人には直接の影響は小さいかもしれません。

ポイントは、「長時間働いて超過労働給与額で稼ぐ」という従来の戦略が、制度上の天井にぶつかりやすくなったということです。

長距離トラックの給料に影響しやすい"拘束時間"の基準(1日/1か月)

時間外の上限と併せて、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)も見直されています(※7)。

拘束時間とは、労働時間に休憩時間を加えた、始業から終業までの全体の時間です。長距離トラックでは荷待ち時間も拘束時間に含まれるため、実際に運転していない時間であっても影響があります。

国土交通省の資料に基づく主な基準を整理します(※7)。

項目

基準の概要

1日の拘束時間

原則として上限が定められている

1か月の拘束時間

原則として上限が定められている

宿泊を伴う長距離運行

一定の条件のもとで例外的な扱いが示されている

宿泊を伴う長距離運行については、資料のなかで一定の条件下での扱いが示されています(※7)。ただし、例外はあくまで限定的な条件のもとであり、「長距離だから無制限に拘束できる」というわけではありません。

長距離トラックの給料は"労務管理が前提"に:制度後の求人比較ポイント

制度変更を踏まえると、長距離トラックの給料は「どれだけ長く働くか」よりも「会社の賃金設計がどうなっているか」で差がつきやすくなっています。

これまでの「長時間労働依存型」と、「固定給・単価設計型」の違いを整理すると、以下のようになります。

比較の観点

長時間労働に依存した稼ぎ方

固定給・単価を重視した稼ぎ方

収入の安定性

運行量や残業時間に左右されやすく、月ごとの振れ幅が大きい

基本給が高めに設定されていれば安定しやすい

制度との整合

年960時間の上限に抵触しやすく、収入が減るリスクがある

上限の影響を受けにくい

手当の設計

歩合や超過労働に依存し、手当が整備されていない場合がある

運行手当・宿泊手当が整備されている場合がある

労務管理

管理が曖昧な場合、拘束時間や荷待ちの計上が不透明になりやすい

管理体制が整っている会社ほど制度対応がしやすい

なお、国土交通省はトラック運送事業における適切な賃金確保を政策課題として位置づけており、適正な運賃制度(標準的な運賃)の議論も進んでいます(※8)。背景として、運送業全体で「ドライバーの労働条件改善」が制度的に推進されている点は押さえておくとよいでしょう。

「必ず給料が下がる」とも「制度が変わっても稼げる」とも断定はできません。しかし、長時間労働に依存した賃金構造の会社と、固定給・手当をしっかり整備した会社との差は、以前より見えやすくなったと言えます。

この章のまとめ

  • 2024年4月から時間外労働は年960時間が上限。長時間労働で稼ぐ余地は制度上狭まった(※7)
  • 拘束時間にも基準があり、宿泊を伴う長距離にも一定の条件が示されている(※7)
  • 「長時間労働依存」と「固定給・単価設計」の違いを意識して求人を比較する
  • 転職時は「固定給比率」「手当の設計」「労務管理体制」「賞与」を軸にする

次はいよいよ、これまでの内容を踏まえた「求人票チェックリスト」と「比較表テンプレート」を整理します。

長距離トラックの給料を求人票で見抜くチェックリスト(転職で後悔しない条件整理)

ここまでの章で整理した「統計の見方」「給料の内訳」「割増賃金の最低ルール」「制度の前提」を、実際の転職活動でどう使うかをまとめます。固定と変動の切り分け、割増賃金の計算、制度に沿った労務管理の有無を質問できれば、ミスマッチを大幅に減らせます。

長距離トラックの給料を求人票で見る順番:固定給→手当→割増→賞与

求人票を見るときは、以下の順番で確認していくのがおすすめです。

  1. 固定給の水準と定義:基本給はいくらか。日給月給なのか月給制なのか
  2. 手当の種類と条件:運行手当、宿泊手当、無事故手当などの有無と支給条件
  3. 割増賃金の扱い:固定残業代が含まれているか。含まれている場合、何時間分でいくらか
  4. 賞与の有無と実績:「賞与あり」の場合、直近の支給実績(何か月分など)

この順番で見ると、「求人票の月給30万〜40万円」が実際にはどういう構成なのかが見えてきます。

長距離トラックの給料チェックリスト:固定残業・歩合・運行手当の確認

求人票や面接で確認すべき項目を、チェックリストとして整理します。

#

チェック項目

確認のポイント

根拠・背景

1

基本給の金額と定義

月給制か日給月給制か。固定部分はいくらか

「月給」の表記だけでは判断できない

2

固定残業代の有無

何時間分をいくらで固定しているか

固定残業時間を超えた分は別途支給が必要(※5)

3

歩合給の算定方法

何に連動するか(距離・件数・売上)。最低保障はあるか

月収の変動幅に直結する

4

運行手当・宿泊手当の条件

長距離便・宿泊便ごとの単価。月の本数の目安

手当が出る条件を把握しないと見込み月収が計算できない

5

時間外の割増率

25%以上か。月60時間超は50%以上か

労基法37条、政令(※5)(※6)

6

深夜の割増率

25%以上か。時間外との重複計算がされているか

労基法37条4項(※5)

7

休日労働の扱い

法定休日の割増率は35%以上か。休日出勤の頻度

政令(※6)

8

割増賃金の計算基礎

基本給のみか、手当も含むか

除外できる手当は限定列挙されている(※5)

9

賞与の有無・実績

支給回数・直近の実績額。業績連動か固定か

年収に大きく影響する

10

社会保険の加入状況

健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険

法定福利の確認

11

拘束時間の管理方法

デジタコやクラウド管理で拘束時間を把握しているか

改善基準告示への対応状況(※7)

12

荷待ち・荷役の扱い

荷待ち時間は拘束時間として計上されているか

荷待ちも賃金計算に影響する

13

時間外の実績

直近数か月の時間外労働の平均は年960時間の枠内か

年960時間上限への対応状況(※7)

上記をすべて面接の場で聞くのが難しい場合は、「最低限、1〜6は確認する」「7〜13は可能な範囲で聞く」といった優先順位をつけると使いやすくなります。

長距離トラックの給料と働き方:年960時間・拘束時間の管理方法を聞く

制度の前提(年960時間の上限・拘束時間基準)に関しては、「会社が制度をどう運用しているか」を確認することが重要です。

面接や応募時に聞ける質問の例を挙げておきます。

  • 「時間外労働は月平均どのくらいですか?年間で960時間の枠に対してどういう状況ですか?」
  • 「拘束時間の管理はどういう仕組みで行っていますか?(デジタコ、運行管理システムなど)」
  • 「宿泊を伴う長距離便の場合、拘束時間の扱いはどうなっていますか?」
  • 「荷待ち時間はどう記録・管理されていますか?」

こうした質問ができると、「制度に対応して労務管理を整備している会社かどうか」を判断する材料になります。曖昧な回答しか返ってこない場合は、制度対応が十分でない可能性も考慮に入れてよいでしょう。

長距離トラックの給料の"比較表"を作る(同じ軸で3社並べる)

転職で後悔しないためには、複数の求人を「同じ軸」で並べて比較することが大切です。以下のテンプレートを使い、3社程度を横並びで整理してみてください。

比較項目

A社

B社

C社

基本給(月額)

固定残業代(有無・時間・金額)

歩合給(有無・算定基準)

運行手当・宿泊手当(条件・単価)

時間外の割増率

深夜の割増率

休日の割増率

賞与(実績)

社会保険

月平均の時間外実績

拘束時間の管理方法

荷待ち・荷役の扱い

この表を埋めるだけで、「A社は固定給が高いが賞与がない」「B社は歩合が大きくブレやすいが手当が手厚い」「C社は固定残業が長いが管理体制がしっかりしている」など、各社の特徴が見えてきます。

比較表の「基準になる水準」としては、賃金構造基本統計調査(2025年)の該当職種の「所定内給与額」「きまって支給する現金給与額」「年間賞与」をベンチマークに使うことができます(※1)(※3)。求人票の条件が統計の平均を大幅に下回っている場合は、その理由を確認する材料になります。

また、国土交通省が適正原価制度の議論を進めている背景(※8)も踏まえると、今後は運賃見直しを通じてドライバーの賃金水準が改善に向かう可能性があります。比較表を作る際は、「現時点の条件」だけでなく「会社の姿勢(制度対応・賃金改善の取り組み)」も一つの軸として持っておくとよいでしょう。

この章のまとめ

  • 求人票は「固定給→手当→割増→賞与」の順で確認する
  • チェックリスト(13項目)を使い、確認の漏れを防ぐ
  • 制度対応(年960時間・拘束時間管理)を質問できると、会社の労務管理レベルが見える
  • 3社を同じ軸で並べる比較表を作ると、条件の違いが可視化できる

次のステップは、実際に3社分の比較表を埋めて、自分の優先順位(収入・休日・運行形態・管理体制)と照らし合わせることです。

長距離トラックの給料で転職を迷ったら

ここまで、長距離トラックの給料を「相場→内訳→制度→求人票チェック」の順で整理してきました。最後に、転職判断の進め方と、迷ったときの選択肢を簡潔にまとめます。

長距離トラックの給料で後悔しない転職の進め方(比較表→応募→確認)

転職活動の流れとして、以下の3ステップを意識するとスムーズです。

ステップ1:相場と制度の前提を理解する

賃金構造基本統計調査(2025年)の該当職種の賃金水準を「ものさし」として持ちます(※1)(※3)。そのうえで、割増賃金の最低ルール(時間外25%・休日35%・深夜25%)(※5)(※6)と、2024年以降の制度(年960時間の上限・拘束時間基準)(※7)を前提として頭に入れておきましょう。

ステップ2:求人票を比較表で整理する

前章のチェックリストと比較表テンプレートを使い、気になる求人を3社以上並べます。「固定給の水準」「歩合・手当の設計」「割増賃金の扱い」「賞与の有無」「労務管理の体制」を同じ軸で比較してみてください。

ステップ3:面接で条件を確認する

求人票だけでは読み取れない部分(歩合の算定式、固定残業の超過分、拘束時間の管理方法など)を面接で質問します。曖昧な回答しか返ってこない場合は、入社後に「聞いていた話と違う」というリスクがあることも考慮に入れましょう。

さらに、比較の際は「収入」だけでなく「休日」「運行形態」「管理体制」も含めた複数の軸で判断すると、より納得感のある転職ができます。以下の意思決定マトリクスを参考にしてみてください。

判断の軸

自分にとっての優先度(高/中/低)

A社

B社

C社

収入の安定性(固定給比率)

年収の総額

休日・拘束時間

運行形態(長距離/中距離/定期便等)

労務管理の体制

この3ステップを踏めば、「なんとなく給料が高そうだから」「知り合いに勧められたから」という曖昧な判断ではなく、条件を比較したうえでの納得感のある転職につながります。

ただし、一人で求人票を読み解き、面接で条件を確認し、比較表を埋めていく作業は、現職で働きながらだと負担が大きいのも事実です。

長距離トラックの給料条件の確認が不安なら:『GOジョブ』の転職支援

「求人票のどこを見ればいいかは分かったけれど、自分一人で条件交渉や確認をするのは不安」と感じる方もいるかもしれません。

『GOジョブ』(GOジョブ株式会社が運営、GO株式会社グループ)は、ドライバー職に知見のあるキャリアアドバイザーが求人紹介・選考アドバイス・面接設定を行う転職支援サービスです。

この記事で整理したチェックリストや比較表の内容を、キャリアアドバイザーに共有しながら求人を絞り込むことで、自分一人では確認しづらい条件面の情報も効率的に集められます。

もちろん、転職するかどうかはご自身の判断です。まずは相場と制度の前提を把握したうえで、必要に応じて支援を活用するのも一つの選択肢として検討してみてください。

まとめ:長距離トラックの給料を一次情報で整理し、納得できる転職判断を

この記事の要点を3つに絞ります。

  1. 相場は賃金構造基本統計調査(2025年)で確認する:「長距離」の単独統計はないため、該当職種の「所定内給与額」「きまって支給する現金給与額」「年間賞与」を組み合わせて読む(※1)(※2)(※3)
  2. 割増賃金の最低ルールを知っておく:時間外25%・休日35%・深夜25%は法令で決まっている(※5)(※6)。給与明細で「率」「計算基礎」「固定残業の扱い」を確認する
  3. 2024年以降の制度前提で求人を比較する:年960時間の上限(※7)を踏まえ、「固定給比率」「手当設計」「労務管理体制」で会社を見分ける。比較表を作って3社以上を横並びにする

長距離トラックの給料は、「いくらもらえるか」だけでなく、「何の仕組みでその金額になっているか」を理解することが、後悔のない転職につながります。

条件比較の軸が整理できたら、次は実際に求人を見て比較表を埋めてみてください。条件の確認に不安がある場合は、『GOジョブ』のキャリアアドバイザーに相談するのも有効な手段です。ドライバー職に詳しいアドバイザーが、求人紹介から面接設定までサポートしてくれます。

配送年収CTA

参考情報 ※1 出典:賃金構造基本統計調査(e-Stat):令和7年(2025年)一般労働者・職種(データセット一覧) URL:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?cycle=0&cycle_facet=tclass1%3Atclass2&layout=datalist&page=1&tclass1=000001229845&tclass2=000001229849&tclass3=000001229855&tclass4val=0&toukei=00450091&tstat=000001011429 該当箇所:表番号1、表番号7ほか(職種別の賃金指標) ※2 出典:令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査:調査の概要(PDF) URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/gaiyo.pdf 該当箇所:調査の時期、調査事項(所定内/超過実労働時間、賞与等) ※3 出典:賃金構造基本統計調査(e-Stat):表番号1(令和7年・一般労働者・職種)データセット情報 URL:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?cycle=0&layout=datalist&page=1&stat_infid=000040421116&tclass1=000001229845&tclass2=000001229849&tclass3=000001229855&toukei=00450091&tstat=000001011429 該当箇所:統計表名(職種小分類別の賃金指標) ※4 出典:職業情報提供サイト(job tag):トラックドライバー(職業詳細) URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/477 該当箇所:賃金(年収)・労働時間・求人賃金(月額)・有効求人倍率 等 ※5 出典:労働基準法(e-Laws) URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 該当箇所:第37条(時間外・休日・深夜の割増賃金) ※6 出典:労働基準法第37条の割増率最低限度を定める政令(平成6年政令第5号) URL:https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005 該当箇所:本文(時間外25%・休日35%の最低限度) ※7 出典:国土交通省(PDF):「標準的な運賃」の見直しについて URL:https://www.mlit.go.jp/common/001726549.pdf 該当箇所:時間外労働上限(年960時間)・拘束時間等(改善基準告示)に関するスライド ※8 出典:国土交通省:トラック運送事業の適正原価に関する実態調査への協力依頼 URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000129.html 該当箇所:法改正の趣旨(適切な賃金確保、適正原価制度)