マニュアル車のタクシー運転手になるには?必要な免許や現状を解説

最終更新日:2025年12月15日

マニュアル タクシー

近年、タクシー業界は車両のハイブリッド化・AT化が進み、「タクシー=マニュアル車」の時代は大きく様変わりしました。それでも「マニュアル車でタクシー運転手になりたい」「自分はAT限定免許だけどタクシー業界に飛び込みたい」という方もいるでしょう。本記事ではマニュアル車タクシーの現状や必要な免許条件、さらにMT・ATそれぞれのメリット・デメリットまで、公的な統計データや法令をもとに詳しく解説します。最後に未経験からタクシードライバーを目指す方へのサポート情報も紹介します。

タクシー運転手に必要な免許・条件(マニュアル免許は必要?)

普通第二種免許とは(必要な資格と年齢要件)

タクシー運転には第二種運転免許が必須となります。道路運送法上、旅客を有償で運ぶタクシー運転手には「普通自動車第二種免許」が必要です(※1)。営利目的で長時間・多数の乗客を乗せるため、乗客安全の観点から第二種免許には第一種免許より厳しい取得要件(年齢・経験)と専門教習が課されています。

第二種免許試験は原則「満21歳以上」かつ「第一種免許の保有期間3年以上」が受験条件とされています。ただし2022年の法改正で特例教習制度が導入され、教習修了者に限り「19歳以上・保有期間1年以上」まで要件が緩和されました(※2)。これにより若年層でも一定の教習を受ければタクシー乗務資格を得られるようになり、人手不足解消が図られています。

この年齢要件や運転経験年数の緩和により、より多くの方がタクシードライバーとしてのキャリアをスタートできる環境が整いつつあります。特に若い世代の方で早期に専門職に就きたいと考える方にとっては、大きなチャンスと言えるでしょう。

AT限定二種免許でもタクシー運転手になれる

普通二種免許にはMT車限定だけでなくAT限定免許も存在します。1991年の制度改正でAT限定の二種免許取得が可能となり(※3)、現在ではタクシー車両の大多数がAT車であることから、AT限定二種免許でも支障なくタクシー運転手になれます。実際、多くの事業者がAT限定免許所持者を採用しています。

AT限定免許でタクシー乗務が可能な理由 ・現在のタクシー車両の大半がAT車である ・都市部の大手事業者はほぼすべてAT車を導入している ・運転操作が容易で安全性が高い ・新人ドライバーでも短期間で習熟できる

ただし、AT限定二種免許ではマニュアル車タクシーの運転は法的にできません(免許条件違反)。そのため社用車にMT車を含むタクシー会社や地方でMT車両運用がある場合、マニュアルの二種免許が必要になります。AT限定で入社後にMT車へ乗務したい場合は、指定教習所での限定解除審査(技能検定)に合格しAT限定条件を外す必要があります。

まとめ(免許要件の要点整理)

タクシー運転手になるための免許要件をまとめると、以下のようになります。

・普通自動車第二種免許が必須 ・原則21歳以上かつ第一種免許保有期間3年以上 ・特例教習修了者は19歳以上かつ保有期間1年以上でも受験可能 ・AT限定二種免許でもタクシー運転手として働ける ・マニュアル車に乗務したい場合はAT限定でない二種免許が必要 ・AT限定解除は指定教習所で技能検定に合格すれば可能

現在のタクシー業界の実情を考えると、AT限定免許でも十分にプロドライバーとして活躍できる環境が整っています。マニュアル車にこだわりがない限り、AT限定免許での取得が効率的と言えるでしょう。

【参考URL】 ※1 出典:内閣府「第二種免許の意義・必要範囲について」 https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/231130/local03_02.pdf ※2 出典:警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/jyuken_tokurei.html ※3 出典:警察庁委託「職業運転者に必要な免許制度の在り方に関する調査研究報告書」 https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo/professional/final_report.pdf

タクシー車両におけるマニュアル車・AT車の現状

タクシー業界で進むAT車への移行

現在、タクシー業界ではオートマチック車が主流です。国土交通省の統計によると全国のタクシー車両数は約17万台で、そのうち約2割が最新型のUDタクシー(ユニバーサルデザインタクシー、全車AT・ハイブリッド車)となっており(※4)、従来型セダンを含めてもほぼ全てがAT車と推計されます。

特に都市部の大手事業者はタクシーを順次ハイブリッドAT車へ更新しており、AT限定免許でも全く支障がない環境になっています。東京や大阪などの主要都市では、ほとんどの営業車両がトヨタのJPN TAXIやプリウスなどのハイブリッドAT車に置き換わっています。

この背景には、環境への配慮や燃費性能の向上、さらには乗客の快適性向上といった複合的な要因があります。また、ドライバーの高齢化が進む中で、運転負荷の軽いAT車への需要が高まっていることも大きな要因です。

マニュアル車タクシーが減少した理由(都市部と地方の違い)

一昔前までタクシー車両はクラウン等のMT車が一般的で、「タクシー運転手=マニュアル操作に習熟」が暗黙の了解でした。しかし自動変速機技術の向上や燃費性能の改善により、営業車としてAT車でも十分な耐久性・経済性を確保できるようになりました(※5)。

加えてAT車は運転負荷が軽く乗客の乗り心地も向上することから、2000年代以降は業界全体で積極的にAT車を導入する流れが加速しました。かつては「MT車の方が燃費が良い」「故障が少ない」といった声もありましたが、現代のAT車・CVT車・ハイブリッド車の性能向上により、そうした差はほとんどなくなっています。

マニュアル車が減少した主な理由 ・自動変速機の技術向上により耐久性・経済性が確保できるようになった ・AT車の方が運転負荷が軽く長時間運転に適している ・乗客の乗り心地が向上する ・ドライバーの高齢化に対応しやすい ・若年層の人材確保がしやすい(AT限定免許所持者が増加)

一方で地方の中小タクシー会社では、現在でも一部にMT車両を運行している例があります。例えば山間部で旧式ディーゼル車を使い続ける事業者などですが、こうしたケースは少数派です。全体としては全国的にAT化の波が広がっており、若年ドライバーの確保や乗務員の高齢化対策としてもAT車への置き換えが推進されています。

MT車での乗務を希望する場合、求人は限定的です。車好きで「マニュアル車にこだわりたい」場合でも、入社後に希望の車種に乗れるとは限りません。実務ではAT車の利点が大きいため、MT車に乗務できる求人があれば貴重と言えます。そのためマニュアル車タクシーに乗りたい方は、事前に車種や車両構成を確認して会社選びをすることが重要です。

まとめ(業界動向の要点整理)

タクシー業界におけるマニュアル車とAT車の現状をまとめると、以下のようになります。

・全国のタクシー車両約17万台のうち、ほぼ全てがAT車 ・UDタクシーは約2割を占め、すべてAT・ハイブリッド車 ・都市部の大手事業者はほぼ100%AT車に移行済み ・地方の中小事業者でも一部を除きAT車が主流 ・マニュアル車タクシーの求人は極めて限定的 ・MT車希望者は事前に車両構成を確認した会社選びが必要

業界全体としてAT化が進んでおり、今後もこの傾向は続くと予想されます。マニュアル車での乗務を希望する方は、選択肢が限られることを理解した上で求人を探す必要があるでしょう。

【参考URL】 ※4 出典:国土交通省「国土交通白書2023年版 第II部データ集」 https://www.mlit.go.jp/statistics/content/001751789.pdf ※5 出典:警察庁委託「職業運転者に必要な免許制度の在り方に関する調査研究報告書」https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo/professional/final_report.pdf

マニュアル車タクシーのメリット・デメリット

マニュアル車タクシーならではの利点

マニュアル車は自分で変速操作を行うため、エンジンパワーを引き出す走行性能のコントロールがしやすいメリットがあります。下り坂でのエンジンブレーキ利用や雪道での細かな速度調整など、路面状況に応じたきめ細かな運転が可能です。

また運転好きにとっては操作する楽しみがあり、スキル習熟度が仕事のやりがいにつながる面もあります。ベテランドライバーの中には「MT操作ができて一人前」との考えもあります。かつてMT全盛期には、スムーズなクラッチ操作や巧みなギアチェンジによって燃費良く走る技能が重宝されました。現在でもMT車の運転技術を極めたいという志向の方には、マニュアル車での乗務にやりがいを感じられるでしょう。

マニュアル車の主な利点 ・エンジンパワーを引き出しやすく走行性能のコントロールがしやすい ・下り坂でのエンジンブレーキ活用が容易 ・雪道など路面状況に応じた細かな速度調整が可能 ・運転する楽しみがあり、スキル習熟がやりがいにつながる ・プロドライバーとしての技術を磨ける

一般にMT車はAT車より構造が簡単で変速ロスが少ないため燃費が良いと言われます。ただ近年はAT車でも電子制御や無段変速(CVT)の発達で燃費性能が向上し、タクシー用車両でもハイブリッド化が進んだ結果、両者の燃費差はごく小さくなっています。むしろ営業走行ではエコ運転技術の有無が燃費に影響するため、免許の種類による燃費の優劣はほぼないと考えてよいでしょう。

AT車タクシーの利点(=MT車のデメリット)

AT車はクラッチ操作が不要なため、長時間運転でも疲労が軽減されやすく、渋滞が多い市街地走行でも負担が小さいです。加減速が滑らかで乗客の快適性も高まります。またシフト操作に気を取られない分、周囲の状況に集中でき安全運転に専念しやすい利点があります。

新人ドライバーでも短期間で習熟しやすく、未経験からでもプロドライバーになりやすい環境と言えます。タクシー業界では長時間の乗務が基本となるため、運転負荷の軽減は大きなメリットです。特に都市部では頻繁な発進・停止が繰り返されるため、クラッチ操作が不要なAT車の方が圧倒的に楽だという声が多く聞かれます。

AT車の主な利点 ・クラッチ操作が不要で長時間運転でも疲労が少ない ・渋滞時の運転負荷が小さい ・加減速が滑らかで乗客の快適性が高い ・シフト操作に気を取られず周囲の状況に集中できる ・安全運転に専念しやすい ・新人ドライバーでも短期間で習熟できる ・未経験からでもプロドライバーになりやすい

整備費用面では、MT車はクラッチ交換等のコストがかかる一方、AT車はオイル交換費用がかかる程度で、総合的な維持費に大差はありません。ハイブリッド車の場合は定期的なバッテリー交換が必要になりますが、燃料費の削減効果を考えると十分にメリットがあると言えます。

まとめ(比較結果の総括)

以下の表で、マニュアル車とAT車の主な違いをまとめました。

マニュアル車とAT車の主な違い

以上を踏まえると、現在のタクシー業務では総合的にAT車のメリットが大きいのが実情です。操作の容易さによる安全・快適性向上、ドライバーの負担軽減、人材確保のしやすさ等から、多くの事業者がAT車を採用しています。

一方で「MT車でなければ得られない運転の醍醐味」を重視する人も存在するため、趣味嗜好としての魅力は残っています。自分に合った働き方を考える上で、これらメリット・デメリットの比較検討が重要です。

車両の種類にこだわりがなく、効率的にタクシードライバーとしてのキャリアをスタートしたい方には、AT限定二種免許の取得とAT車での乗務をおすすめします。一方で運転技術を極めたい、マニュアル操作の楽しさを仕事で味わいたいという方は、限られた求人の中からMT車を扱う事業者を探すことになるでしょう。

まとめ

本記事では、マニュアル車のタクシー運転手になるために必要な免許や、タクシー業界におけるマニュアル車とAT車の現状、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説しました。

記事のポイント ・タクシー運転には普通自動車第二種免許が必須 ・2022年の法改正により19歳以上・免許保有期間1年以上でも特例教習修了者は受験可能 ・AT限定二種免許でもタクシー運転手として働ける ・現在のタクシー車両の大半はAT車で、マニュアル車は減少傾向 ・都市部ではほぼ100%AT車に移行済み ・マニュアル車の求人は極めて限定的 ・総合的にはAT車のメリットが大きく、業界標準となっている ・マニュアル車にこだわる場合は事前の会社選びが重要

現在のタクシー業界では、AT限定免許でも十分にプロドライバーとして活躍できる環境が整っています。未経験からタクシードライバーを目指す方は、まずAT限定二種免許の取得を検討されることをおすすめします。

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