最終更新日:2025年12月15日

「流し」のタクシーとは、街中で手を挙げて乗車できる伝統的なタクシー利用法です。アプリ配車が普及する現在でも、急いでいる時やスマホが使えない状況では、多くの人が流しタクシーに頼っています。しかし、中には「本当に安全だろうか」「料金はいくらかかるのか」と不安に思う方もいるでしょう。
本記事では政府や公的機関の一次情報をもとに、流しタクシーの仕組みや安全性、料金システムから上手な捕まえ方まで徹底解説します。これを読めば流しタクシーへの疑問が解消し、安心してタクシーを利用できるようになります。
「流しタクシー」とは、街中を走行している営業中の空車タクシーを手を挙げて止め、そのまま乗車できるタクシーのことです(※1)。電話予約やアプリ配車ではなく、路上で直接つかまえる利用形態であり、乗りたいときにその場で捕まえられるのが最大の特徴です。
駅前のタクシー乗り場で拾う場合や電話・無線で配車を依頼する場合とは対照的に、流しタクシーは状況によっては捕まえにくい場合もありますが、従来からこれら他の利用法と合わせて使われてきました(※1)。タクシーに乗車したいと思った時、これまでは流しのタクシーをつかまえる、駅等のタクシー乗り場で乗車、もしくはタクシー無線や電話で配車を依頼するというのが主な利用形態でした。
都市部では昔から一般的なタクシーの使い方で、日本では1920年代から存在する歴史あるサービスです(※2)。大正10年には、今では当たり前の流しのタクシーが現れたとされています。特に終電後の深夜帯など、アプリが普及する前から多くの人に利用されてきました。
想定読者世代でも、スマホアプリを使わず直接流しで乗る人は少なくありません。急いでいる時やアプリが使えない状況では、素早くタクシーに乗る手段として今でも価値が高いのです。
全国どこでも利用可能ですが、流し営業が盛んなのは主要都市が中心です。地方では流しの台数自体が少なく、駅や施設の乗り場で待機しているタクシーを使うケースが多くなっています。
流しタクシーは時代が変わっても、多くの人にとって身近で便利な移動手段として定着しています。アプリ配車が便利な一方で、登録不要で誰でもすぐに使える流しタクシーの存在は、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。
【参考URL】 ※1出典:国土交通省「政策レビュー(平成31年3月)」 https://www.mlit.go.jp/common/001281824.pdf ※2出典:国土交通省「メールマガジン第2489号」 https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_006673.html
流しタクシーを上手に捕まえるには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、確実にタクシーを止めるための具体的な方法をご紹介します。
タクシーを捕まえる基本動作は、「道路沿いで手を高く挙げ、空車タクシーに合図する」ことです。車内のお客様を降ろした直後のタクシーも拾える可能性があるので、しっかりとアピールしましょう。遠慮せず、はっきりと手を挙げることが成功の秘訣です。
タクシーの屋根にある行灯やフロントガラスの表示を確認することも重要です。「空車」表示が点灯していれば乗車可能のサインですが、「賃走」「実車」などの表示や消灯の場合、お客様が乗っているか営業終了なので止まりません。遠くからでも表示を見て判断し、空車のタクシーだけに合図するようにしましょう。
安全な場所で合図することが何よりも重要です。タクシーも道路交通法を遵守するため、交差点内や横断歩道の直前直後など停車禁止の場所では乗せたくても停車できません(※3)。乗客は、タクシーを安全に止められる位置を認識していない人が多く、交差点内や横断歩道などの乗降に危険な場所でも停止させようとすることがありますが、運転手としては応じられない状況なのです。
車を寄せやすい広い場所や路肩のある所で待つと成功率が上がります。具体的には、交差点から十分に離れた場所、横断歩道のない直線道路、路肩が広くて車が停車しやすい場所などが適しています。また、一方通行の道路では進行方向に注意し、タクシーが走ってくる方向で待つことも大切です。
夜間や雨天時は空車が捕まりにくいので根気が必要です。流しタクシーが見つからない場合、人通りや交通量の多い通りへ移動すると見つけやすくなります。また近くにタクシー乗り場があれば、そちらに向かった方が早いこともあります。
タクシーが止まってくれない時は、場所やタイミングを変えて再トライしましょう。例えば大通りに出る、進行方向が合いやすい側で待つ、時間帯をずらすなどの工夫で捕まえられる可能性が高まります。焦らず冷静に対応することが大切です。
特に郊外や地方では流し営業車両が少ないため、タクシー会社に電話するか、駅・商業施設のタクシープール(乗り場)を利用するのが確実です。状況に応じて使い分けることで、よりスムーズに移動できるでしょう。
【参考URL】 ※3出典:国土交通省「タクシー運転者指導監督マニュアル(応用編)」https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/resourse/data/taxi_ouyou.pdf
流しタクシーには、他の移動手段にはない多くのメリットがあります。ここでは、流しタクシーを利用する主な利点をご紹介します。
アプリで配車を待つ時間が不要で、道路上で空車を見つけ次第すぐ乗車できるため、急いでいる時に非常に便利です。特に深夜や早朝など緊急時には、流しタクシーが頼りになります。電車を逃した時や急な予定変更があった時でも、路上ですぐにタクシーを見つけられれば、時間のロスを最小限に抑えられます。
電話やアプリでタクシーを呼ぶと発生する迎車料金(地域により数百円程度)が、流しなら不要です。その場で拾えば初乗り料金からのメーター料金だけで済むため、経済的です。短距離の移動では、この迎車料金の有無が総額に大きく影響することもあります。
流しタクシーの運賃はメーター制で明確に表示されるうえ、国の認可した料金なので不当に高額になる心配がありません(※4)。交渉やチップも不要で、メーター表示通りの公正な支払いだけで済みます。料金については後の章で詳しく解説しますが、国土交通大臣の認可を受けた適正な料金体系が整備されているため、安心して利用できます。
特別な登録やスマホ操作がいらないので、誰でも手を挙げるだけで利用可能です。高齢者や観光客などアプリに不慣れな人でも利用しやすく、デジタルデバイドの心配がありません。スマートフォンのバッテリーが切れている時や、通信環境が悪い場所でも問題なく利用できる点も大きなメリットです。
大都市圏では特にタクシー台数が多いため、流しを使えば数分以内に捕まることも多くあります。信号待ちの間に拾える場合もあり、状況次第では最も早く移動手段を確保できます。繁華街や駅周辺など、タクシーが頻繁に通るエリアでは、ほとんど待たずに乗車できることも珍しくありません。
流しなら思い立ったその瞬間に利用開始でき、予約時間に縛られません。予定変更や電車の運休時などでも、すぐ路上で代替手段を確保できる安心感があります。アプリで配車予約をした場合、指定した場所で待たなければなりませんが、流しなら自分が動きながらタクシーを探すことも可能です。
これらのメリットを活かせば、流しタクシーは非常に便利で効率的な移動手段となります。状況に応じて上手に活用しましょう。
【参考URL】 ※4出典:国土交通省「タクシーの運賃制度について」 https://www.mlit.go.jp/common/001108272.pdf
流しタクシーには多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。事前に把握しておくことで、より快適に利用できるでしょう。
深夜の繁華街や雨天時、また乗務員の交代時間(夕方頃)には空車がつかまえにくくなります(※1)。流しの車両がなかなかつかまらない、乗り場で長時間待たされるといった不便さが指摘されています。その結果、路上で長時間待つ可能性があり、急いでいる時にはデメリットとなることがあります。
特に金曜日の夜や年末年始、イベント開催時などは需要が集中するため、タクシーを見つけるのに時間がかかることを覚悟しておく必要があります。
流し営業が主流なのは都市部中心です。一方、地方や郊外では流しのタクシー自体が少なく、政令指定都市等の流し地域として指定されているのは札幌、仙台、さいたま、千葉、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、北九州、福岡の13地域に限られています(※5)。これら以外の地域では流しより電話配車や待機所利用が一般的であり、そのため地域によっては流しタクシーを探すのに時間がかかります。
地方に行く際は、事前にタクシー会社の電話番号を控えておくなど、流し以外の手段も準備しておくと安心です。
メーター料金は走行距離や時間で変動するため、乗車前に正確な運賃総額がわかりません。特に長距離や渋滞時は料金がかさむことがあり、「乗ってみないと料金が読めない」点を不安に感じる利用者もいます。アプリ配車では事前に料金の目安が表示されることが多いため、この点は流しタクシーのデメリットと言えるでしょう。
ただし、乗車前に運転手に「だいたいいくらくらいですか」と尋ねることは可能ですし、メーター料金は国の認可を受けた公正なものなので、不当に高額になることはありません。
乗る側が希望しても、法律上タクシーが停車できない場所では乗車できないため注意が必要です(※3)。安全に停車できる場所まで移動する手間が発生することがあります。交差点付近や横断歩道の近く、バス停の前などでは、タクシーが停車したくてもできない状況があることを理解しておきましょう。
街中で「乗せましょうか?」と声をかけてくる白ナンバー車(白タク)は違法営業であり、利用は非常に危険です(詳細は次章で解説)。流しタクシーを探している際も、必ずナンバープレートが緑色の合法タクシーだけを利用してください。特に観光地や繁華街では、白タクの勧誘が多いため十分な注意が必要です。
流しで来るタクシーは選べないため、車種の大小やサービス品質に多少の差があります。例えば車内決済端末の有無やドライバーの接客態度など、事前に選択できない点はデメリットと言えます。ただし、日本のタクシーは全体的にサービス水準が高いため、極端に悪いサービスに当たることは稀です。
こうした注意点はありますが、適切に対処すれば流しタクシーは安全で便利な移動手段です。次の章では、流しタクシーの安全性について詳しく解説します。
【参考URL】 ※5出典:国土交通省「タクシー事業の現状について」 https://www.mlit.go.jp/common/001087374.pdf
流しタクシーの安全性について不安を感じる方もいるかもしれませんが、日本のタクシーは法律で厳しく規制されており、非常に高い安全性が確保されています。ここでは、流しタクシーが安全である理由と、絶対に避けるべき違法タクシーについて解説します。
営業タクシーは全て国土交通省の許可を受けており、車両には緑色のナンバープレートが付いています。緑ナンバー以外の白ナンバー自家用車が客を載せていれば、それは法律違反(白タク)なので絶対に乗らないでください(※6)。白色のナンバープレートは違法であり、自家用車を使って許可なく有料で人を運送することは禁止されています。違反した場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。
タクシーを利用する際は、必ず車両のナンバープレートが緑色であることを確認しましょう。これが正規タクシーを見分ける最も簡単で確実な方法です。
白ナンバーの無許可タクシーでは運転手の身元・資格が保証されず、乗客がケガをしても補償されない恐れがあります(※6)。白タクを利用した場合、警察から職務質問を受ける場合があり、白タクの事故でけがをした場合、補償が受けられない恐れがあることが指摘されています。
実際に警察庁も白タク行為を取り締まっており、乗った利用者が職務質問を受けるケースも報告されています。必ず許可事業者のタクシーかどうか確認することが、自分の身を守ることにつながります。
特に観光地や繁華街、空港周辺では「安く乗せますよ」と声をかけてくる白タクが存在することがあります。どんなに安くても、絶対に利用しないでください。
日本のタクシー運転手は第二種運転免許(旅客輸送専門の免許)を取得しており、法令や安全運転・接客に関する講習・試験にも合格したプロドライバーです(※5)。登録の要件として第二種運転免許の保有や、法令・安全・接遇・地理に関する講習の修了が義務付けられています。
運転経験や地理知識も豊富で、乗客を安全に送り届ける訓練を受けているため、一般のドライバーとは異なる高い技術と知識を持っています。
営業車両は法定整備に加え、事業者による日々の点検・整備が義務付けられています。ドライブレコーダー搭載や緊急通報システムを備えたタクシーも多く、事故防止・犯罪防止の体制が整っています。車両の整備不良によるトラブルは極めて少なく、常に安全な状態で運行されています。
国の許可タクシーには旅客傷害賠償保険の加入が義務となっており、万一の事故でも乗客1人あたり最低8,000万円以上の補償が支払われます(※6)。無保険の白タクと異なり、正規のタクシーならもしもの際も金銭的補償が受けられるため、安心して利用できます。
道路運送法ではタクシー事業者に対し正当な理由のない乗車拒否を禁じる「運送引受義務」が定められており、空車である限り基本的に乗車を断られません(泥酔・危険行為の乗客は除く)。公的なルールに支えられているため、利用者は公平で安心です。
日本のタクシー犯罪件数は少なく、流しタクシーも含め安全性は世界的に見ても高水準です。運転手は運輸支局発行の乗務員証を車内に掲示しており、身元が明らかな上、GPSで車両位置が管理される会社も多くあります。深夜の一人乗車でも過度に心配する必要はありません。
日本のタクシーは、世界で最も安全な交通手段の一つと言えるでしょう。緑ナンバーの正規タクシーを選ぶ限り、安心して利用できます。
【参考URL】 ※6出典:中部運輸局「白タク排除に向けた啓発活動」https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/press/pdf/jikou2024092601.pdf
流しタクシーの料金について、「いくらかかるのかわからない」という不安を持つ方もいるでしょう。ここでは、タクシー料金の仕組みと割増制度について、詳しく解説します。
タクシー料金は法律に基づき国土交通大臣の認可を受けて設定されており(※4)、地域ごとに上限・下限の範囲内で決められています。旅客の運賃及び料金を定める際は国土交通大臣の認可を受けなければならないとされているため、各社が自由に料金を決められるわけではありません。そのため、ぼったくり等の心配は一切ありません。
料金は距離と時間に応じてメーターが自動計算します。地域によって異なりますが、例えば東京23区では初乗り約1.09kmまで500円で、以降約255mごとに100円ずつ加算されます(※7)。現行運賃から新運賃への改定により、初乗り距離と料金が調整されています。
渋滞で時速10km以下になると時間加算が適用され、停車中や低速走行中でもメーターが進むことがあります。これは運転手が不当に料金を稼いでいるわけではなく、時間的コストを適正に反映した仕組みです。
多くの地域で夜22時から翌朝5時は深夜割増料金(2割増し)が適用されます(※8)。具体的にはメーターの進み方が昼間より20%早くなり、距離あたりの料金が割増となります。深夜に同じ距離を乗ると昼間より割高になる点は留意してください。
深夜割増は、夜間の労働環境や需要と供給のバランスを考慮した制度であり、全国的に導入されています。終電を逃した際などは深夜料金になることを念頭に置いておきましょう。
地域によって冬季割増(降雪地域で冬場に数パーセント割増)や、長距離割引(おおむね9,000円超の部分を1割引)などが導入されている場合があります(※8)。また身体障害者手帳提示で1割引など公共的割引制度も全国で認可されています。自分が該当する割引があるか乗車前に確認するとよいでしょう。
高齢者割引や妊婦割引などを独自に導入しているタクシー会社もあるため、定期的に利用する方は確認してみることをおすすめします。
高速道路や有料道路の料金は実費が運賃と別に加算されます。また、電話やアプリ配車を利用した場合は迎車回送料(配車料金)が別途かかることが多く、例えば東京都心で400円前後です。
支払いは現金のほか、ほぼ全てのタクシーでクレジットカードや交通系ICカード等が利用可能です。チップは不要で、領収証も必ずもらえます。最近ではQRコード決済に対応するタクシーも増えており、キャッシュレス化が進んでいます。
初乗り料金は地域により差があり、都市部ほど短距離初乗り・低料金の傾向があります。例として、大阪市域では初乗り距離が約2kmと長めで初乗運賃680円(2023年現在)など、地方では距離が長く設定される分金額も高めになっています。
自分が住んでいる地域や、旅行先のタクシー料金体系を事前に調べておくと、予算の目安が立てやすくなります。国土交通省のウェブサイトでは、地域別の運賃情報が公開されているので、参考にするとよいでしょう。
流しタクシーの料金は、国の認可を受けた透明性の高いシステムで運用されています。メーター表示通りに支払えばよいので、不安に感じる必要はありません。
【参考URL】 ※7出典:内閣府「東京のタクシー運賃改定資料」https://www.cao.go.jp/consumer/history/07/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/065_220808_shiryou1.pdf ※8出典:国土交通省「タクシーの運賃・料金について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001769794.pdf
流しタクシーは正しく理解して利用すれば、すぐ乗れて安心な移動手段です。本記事で解説した通り、安全性については国の厳しい規制により十分に担保されており、料金についても公的な認可制度により明朗会計が保証されています。
流しタクシーを上手に捕まえるコツは、空車サインを見逃さないこと、安全に停車できる場所で待つこと、そして必ず緑ナンバーの正規タクシーを選ぶことです。深夜や雨天時は捕まえにくいこともありますが、焦らず根気よく探すか、状況に応じてタクシー乗り場や電話配車を利用するなど、柔軟に対応しましょう。
地域によっては流しタクシーの台数が少ない場合もありますが、都市部では今でも多くの人が日常的に利用しています。アプリ配車が便利な時代になっても、登録不要で誰でもすぐに使える流しタクシーの価値は変わりません。
これからは安心して流しタクシーを使ってみましょう。急いでいる時、アプリが使えない時、迎車料金を節約したい時など、流しタクシーは頼れる移動手段です。ぜひ次回は街でタクシーをつかまえて、その快適さと便利さを実感してみてください。
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