最終更新日:2025年12月15日

全国で約19.5万台のタクシー車両(※1)が運行しています。タクシーはセダン型だけでなく、ハイブリッド車や車いす対応のユニバーサルデザインタクシーなど、さまざまな車種があります。本記事では、タクシー車両を快適性・燃費・環境性能・バリアフリーの観点から分類し、車種ごとの特徴や導入状況を解説します。さらに、法人タクシーと個人タクシーで採用される車種の違いや、都市部と地方での車種選択の傾向、高級車・海外製車のタクシー活用例についても紹介します。
タクシーで使用される車両は、乗り心地の快適性や燃費性能、環境への優しさ、バリアフリー対応といった観点でさまざまに分類できます。それぞれの視点から代表的な車種カテゴリと特徴を解説します。
乗客の快適さを優先したタクシー車両として、広い車内空間や上質な乗り心地を備えたモデルがあります。例えばトヨタの「JPN TAXI」は高い天井とゆとりあるシート配置で乗降しやすく、妊産婦や高齢者を含む誰もが利用しやすい構造です(※2)。また、一部のタクシー会社やハイヤーでは高級セダンやミニバンを採用し、ゆったりと静かな移動を提供するハイグレードなサービスも登場しています(※3)。
こうした車種は長時間乗車や接客サービスの質向上に寄与するため、快適さを重視する乗務員や利用者に支持されています。広々とした室内は荷物の多い乗客や複数名での利用にも対応でき、観光やビジネスシーンで重宝されます。快適性に優れた車両を導入することで、タクシー事業者は顧客満足度を高め、リピーターの獲得につなげることができるのです。
【参考URL】 ※1 出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー業界の課題と次期観光立国基本計画への要望」 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001902681.pdf ※2 出典:国土交通省「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づく基本方針」 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/content/001872667.pdf ※3 出典:内閣府規制改革推進会議「タクシーの高付加価値化に関する資料」 https://www8.cao.go.jp/kisei- kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20200228/200228toushi08.pdf
燃料費削減と経済性の観点から、ハイブリッド車など燃費の良いエコカーの導入が進んでいます。実際、タクシー業界ではハイブリッド車の普及が近年急速に拡大し、2015年度の約24,000台(全タクシーの10%)から2020年度には約64,000台(31%)に増加しました(※4)。新規に販売されるタクシー車両の約9割がハイブリッド車となっており(※4)、燃費性能の高さが事業者のコスト削減や環境負荷軽減につながっています。
例えばトヨタ・プリウスやカローラハイブリッドなど一般乗用のハイブリッド車をタクシーに採用する事例も多く、燃料費を抑えたい個人タクシー事業者から大手法人まで広く選択されています。ハイブリッド車は走行距離の長いタクシー業務において、従来のガソリン車に比べて燃料コストを大幅に削減できる点が魅力です。また、静粛性に優れているため乗客に快適な移動空間を提供でき、運転手にとっても疲労軽減につながります。燃費性能を重視した車種選びは、タクシー事業の収益性向上と環境配慮を両立させる賢明な選択といえるでしょう。
【参考URL】 ※4 出典:国土交通省「国土交通白書 令和4年度版 タクシーにおける二酸化炭素排出量の動向」 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r03/hakusho/r04/html/n1113c01.html
環境に配慮した車種としては、ハイブリッド車に加え電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのゼロエミッション車の活用が挙げられます。もっとも、現状のEVタクシー導入台数は全国で約210台程度と全体の0.1%に留まり(※5)、本格的な普及はこれからです。国も商用車分野での電動化を支援しており、トラック・バス・タクシーを対象にEV・FCV導入補助制度を設けるなど促進策を講じています(※6)。
また、2030年度にはタクシー車両の約8%を非化石エネルギー車(EVやFCV等)とする目安目標も掲げられました(※6)。このように環境性能に優れた車種の導入は今後ますます重要となり、自治体や事業者も充電インフラ整備や実証実験を通じて準備を進めています。環境負荷の低減は社会全体の課題であり、タクシー業界においても脱炭素化への取り組みが求められています。電動車両の導入は初期コストがかかるものの、長期的には燃料費削減や企業イメージ向上といったメリットが期待できます。今後の技術革新と支援制度の拡充により、EVやFCVタクシーの普及が加速していくことでしょう。
【参考URL】 ※5 出典:環境エネルギー政策研究所「EVバス・タクシー普及調査結果ブリーフィング 2023」 https://www.isep.or.jp/archives/library/14620 ※6 出典:経済産業省「産業構造審議会グリーンイノベーションプロジェクト部会資料」 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/030_03_00.pdf
高齢者や障がい者を含む誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)タクシーや福祉タクシー車両の導入も重要な視点です。国土交通省は2025年度末までに全国で約90,000台(各都道府県で総車両数の25%相当)の福祉タクシー導入を目標に掲げており(※7)、2023年度末時点でそのうち52,553台が導入済みです(※2)。
具体的には車いすのまま乗降できるスロープ付き車両や、先述のJPN TAXIのように床を低くして乗降しやすくした車種が該当します。こうしたUDタクシーは東京など都市部を中心に普及が進んでおり、全国平均ではタクシー総数の約23.5%がUD車両となっています(※2)。バリアフリー対応のタクシーは、車椅子利用者だけでなくベビーカー連れの乗客や足腰の弱い高齢者にも支持され、今後さらなる導入拡大が期待されています。
誰もが安心して利用できる移動手段を提供することは、タクシー事業者の社会的責任でもあります。バリアフリー車両の増加により、移動に制約のある方々の外出機会が増え、社会参加の促進につながります。また、高齢化が進む日本社会において、バリアフリー対応のタクシーはますます需要が高まると予想されます。事業者にとっても、幅広い利用者層をカバーできることは競争力の向上につながるでしょう。
【参考URL】 ※7 出典:国土交通省近畿運輸局「福祉タクシー導入目標」 https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000356395.pdf
タクシー業界には、会社組織に所属する法人タクシーと、ドライバー個人が独立営業する個人タクシーがあります。両者では保有する車両の規模や選択される車種に違いが見られます。
全国の営業用タクシー車両約20万台のうち、個人タクシーは約2.7万台と全体の1割強を占めるに過ぎません(※1)。残り約9割は法人タクシー会社が保有する車両で、大多数のタクシーは法人によって運行されています(※1)。このため、都市部を中心に街中で見かけるタクシーのほとんどは法人所属車ですが、一方で地域によっては個人タクシーも根強く活動しています。
個人タクシーは長年の運転経験とノウハウを持つベテランドライバーが多く、きめ細やかなサービスを提供する傾向があります。一方、法人タクシーは組織力を活かした安定的な運行体制と、統一されたサービス品質が特徴です。利用者にとっては、どちらも信頼できる移動手段として選択肢となります。
法人タクシー事業者は、社内で統一した車種を大量導入するケースが多く見られます。従来はトヨタ・クラウンコンフォートなどタクシー専用設計のセダン(LPGエンジン搭載)を中心に採用し、燃料補給や整備の効率化を図ってきました。近年は国の補助制度やオリンピック需要も追い風に、法人各社でユニバーサルデザインタクシー(JPN TAXI)の導入が急速に進み、社有車両の入れ替えが進行しています(※2)。
法人では減価償却期間に合わせて一定年数ごとにまとめて新車導入する傾向があり、新技術の車種(ハイブリッド車や車内設備の充実した車両など)も比較的早く取り入れられる傾向があります。例えば東京の大手タクシー会社では、全車両を順次JPN TAXIへ置き換えバリアフリー化率を高めているところもあります。統一車種を採用することで、整備・点検の効率化や部品の共通化によるコスト削減が可能となります。また、ドライバー教育においても同一車種であれば操作方法の習得がスムーズで、安全運転の徹底にもつながります。
法人タクシーは組織的な車両管理を行うことで、常に良好なコンディションの車両を維持し、利用者に安心・安全なサービスを提供しています。
個人タクシー事業者は、自らの資金で車両を購入し営業します。そのため燃費が良く維持費の安い車種や、自身のサービス方針に合った車種を選ぶ傾向があります。実際、タクシー全体でハイブリッド車が増加した背景には、個人タクシーによる積極的な導入も寄与したと考えられます(※4)。
個人事業者の中にはトヨタ・プリウスやカムリ、セダンタイプのハイブリッド車を選択し、燃料コストを削減するとともに静粛で滑らかな乗り心地を売りにする例も見られます。また、国による車両規制緩和によりタクシー車両の選択肢が広がった結果(※8)、個人の裁量で高級セダン(レクサス等)やミニバンを導入し差別化を図るケースも存在します。
個人タクシーはサービスの自由度が高いため、英語対応や観光ガイドを兼ねた独自サービスを展開するドライバーもおり、自身の車種選びに工夫を凝らしています。車両の選定から運行スタイル、接客方法まで、すべてを自分の判断で決められることが個人タクシーの大きな魅力です。自分らしいサービスを追求し、固定客を獲得している個人タクシードライバーも少なくありません。
【参考URL】 ※8 出典:国土交通省「タクシー車両の基準緩和等について」https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000178.html
タクシー車両の導入状況は、営業エリアの環境や利用者ニーズによって地域差が見られます。人口密集地の都市部と過疎地域を含む地方とでは、選ばれる車種や普及ペースに違いがあります。
大都市圏では、新型車両やUDタクシーの導入が他地域に比べて進んでいます。例えば東京都ではタクシー車両の約65%がユニバーサルデザインタクシーに置き換わっており(※2)、全国でも突出したバリアフリー化率を達成しています。都市部では2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた補助制度もあり、多くの事業者が車いす対応車や英語表記のナビ・決済機を備えた新型車種を導入しました。
また、交通量の多い都心では停車・発進を頻繁に繰り返すためハイブリッド車との相性が良く、燃費節減効果が大きいことからプリウスやJPN TAXIなど低燃費車が主流となりつつあります。加えて、訪日観光客やビジネスVIP向けに高級車両を用いたタクシーサービス(グリーンキャブや黒塗りハイヤー型のサービス)も都市部で展開されるなど(※3)、ニーズに応じた多彩な車種が使われています。
都市部では利用者層も幅広く、外国人観光客やビジネスパーソン、高齢者、障がい者など、さまざまなニーズに対応する必要があります。そのため、最新の設備を備えた快適で利便性の高い車両が求められるのです。事業者にとっても、サービス品質の向上は競争力の源泉となります。
地方圏では、比較的長距離の走行や利用客の減少といった事情から、車種更新のペースが緩やかな傾向があります。営業所あたりの保有台数が少なく収益規模の小さい事業者も多いため、新車への置き換えに慎重にならざるを得ない現状があります(※2)。
この結果、地方では旧来型のセダン車を長期間使用し続けている例も少なくありません。例えば四国地方の徳島県ではUDタクシーが全タクシーの1.1%に留まるなど(※2)、バリアフリー車の普及が都市部に比べ大きく遅れています(※2)。また、地方では走行距離が長くガソリンスタンド等のインフラも限られることから、EVタクシー導入には慎重で普及率は極めて低いのが実情です。
しかしながら過疎地の移動需要を支えるため、国土交通省や経済産業省は地方都市でのEVタクシー実証事業も進めています。例えば広島県・和歌山県などでは約150台規模のEVタクシーを用いた実証実験が行われ(※6)、長距離移動や充電タイミングに関する課題検証が進められています。一方、東京や大阪など大都市圏でも約2,500台規模のEVタクシー実証プロジェクトが展開され(※6)、地域ごとの事情に応じた電動車導入のモデルケース創出が図られています。
今後は地方においても、高齢化する地域住民の移動手段確保の観点から、行政の支援を得てユニバーサルデザイン車や低公害車への置き換えが徐々に進むと考えられます。地方のタクシーは公共交通機関の少ない地域での重要な移動手段であり、誰もが利用しやすい車両の普及は地域社会にとって大きな意義があります。
国内メーカー製でユニバーサルデザイン対応のJPN TAXI(ジャパンタクシー)が近年普及しましたが、それ以外にも海外メーカーの車両や国産高級車をタクシーに採用するケースが出てきています。その背景には規制緩和やサービスの多様化があります。
2015年に国土交通省がタクシー車両に関する国内独自の構造基準を見直し、座席サイズや乗降口の大きさなど日本特有の要件を廃止しました(※8)。これによりタクシー事業者の車種選択の幅が大きく広がり、従来は難しかった海外製モデルや大型ミニバン型車両の導入が可能となりました(※8)。
例えば英国のロンドンタクシー車両や米国製SUVなども基準適合しやすくなり、一部で採用検討が行われています。規制緩和は事業者に多様な選択肢を与え、独自性のあるサービス展開を可能にしました。利用者にとっても、従来の枠にとらわれない新しいタイプのタクシーが登場することで、移動体験の幅が広がります。
訪日外国人を含む富裕層ニーズに対応するため、従来のタクシーより格上の車種とサービスを提供する動きもあります。実際、国土交通省も高級車両・多言語対応・WiFi搭載等のハイグレードサービスをタクシーの利便性向上策の一つに位置付けています(※3)。
これを受けて東京都内などでは、レクサスやトヨタ・アルファードといった高級車を黒塗りのタクシー(ハイヤー業態)として運行し、予約制で観光客やビジネスVIP向けに提供する事例が見られます。車内に無料Wi-Fiや多言語対応のタブレットを備え、ドライバーも語学研修を受けるなど、単なる移動手段に留まらない付加価値サービスとして差別化を図っています。
高級車タクシーは、ビジネスシーンでの重要な移動や特別な記念日の送迎など、特別感を求める利用者に選ばれています。ドライバーにとっても、洗練された接客スキルと運転技術を活かせるやりがいのある仕事です。
海外製・高級車種の中には、環境志向や先進イメージからEV(電気自動車)や次世代タクシーを採用する動きもあります。例えばテスラ社製のEVセダンをタクシーとして試験的に導入したり、トヨタの高級燃料電池車を空港送迎向けタクシーに用いるケースも出始めました。これらは話題性や企業イメージ向上も狙った取り組みであり、メディアで取り上げられることでタクシー業界全体の革新性をアピールする効果もあります。
もっとも現時点では車両コストや充電設備の問題から、大規模な普及には至っていません。今後は補助金制度の拡充やラグジュアリー需要の開拓次第で、これら次世代・高級車タクシーが増えていく可能性があります。環境への配慮と上質なサービスを両立させた車両は、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、タクシー業界の新たな魅力を創出するでしょう。
タクシー車両は快適性、燃費性能、環境性能、バリアフリー対応といった多様な観点から選定されています。快適性を重視した車種では、JPN TAXIや高級セダンが乗客に上質な移動体験を提供し、燃費性能に優れたハイブリッド車は事業者のコスト削減と環境負荷軽減に貢献しています。さらに、EVやFCVなどの次世代環境車両の導入も進められており、タクシー業界全体で脱炭素化への取り組みが加速しています。バリアフリー対応のUDタクシーは、高齢者や障がい者を含むすべての人が利用しやすい社会の実現に寄与しています。
法人タクシーと個人タクシーでは車種選定の傾向が異なります。法人では統一車種による効率的な運用が重視され、組織的な車両管理のもと安定したサービスを提供しています。一方、個人タクシーでは経営者の裁量で燃費や独自サービスを追求した車種選びが行われ、きめ細やかな接客とこだわりのサービスで差別化を図っています。
地域別に見ると、都市部では最新のバリアフリー車や低公害車の導入が進み、多様な利用者ニーズに対応した先進的なタクシーサービスが展開されています。一方、地方では従来車種を継続利用しつつ段階的な車両更新が進められており、地域の移動手段として重要な役割を担っています。国や自治体による実証実験や支援制度を通じて、地方においても環境性能に優れた車両の普及が期待されています。
さらに、規制緩和により海外製車両や高級車、次世代のEV車両など、これまでにない多彩な車種がタクシーとして活用され始めています。高級車を用いたハイグレードサービスや、環境志向の次世代タクシーは、利用者の選択肢を広げるとともに、タクシー業界の新たな可能性を切り開いています。このようにタクシー業界は、利用者ニーズの多様化や社会的要請に応じて、車種の選択肢を広げながら進化を続けているのです。
タクシードライバーとして働く際には、こうした車種の特徴や導入背景を理解しておくことで、自分に合った職場選びや働き方の実現につながります。快適な車両で質の高いサービスを提供したい方、燃費性能に優れたエコカーで効率的に働きたい方、最新技術を搭載した次世代車両に携わりたい方など、それぞれの希望に応じた職場が業界には存在します。
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