転職前に知りたい!タクシー運転手は稼げる?嘘と真実をデータで徹底検証

最終更新日:2025年10月10日

タクシー稼げる嘘

タクシー運転手は「未経験からでも高収入が目指せる」と言われる一方で、「タクシーは稼げるは嘘」といった声も耳にします。本記事では、厚生労働省や国税庁などの公的機関が公表したデータをもとに、タクシードライバーの収入実態や給与体系、地域差、勤務形態などを検証します。転職前に知っておきたい注意点や、年収アップを目指すコツも紹介しますので、タクシー業界への転職を検討中の方はぜひ参考にしてください。

タクシー運転手の平均年収と全国平均の比較

まず、タクシー運転手の平均年収がどれくらいなのか確認しましょう。最新の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年)によると、タクシー運転者の全国平均年収は約419万円となっています(※1)。これは同年の全産業労働者の平均年収と比べて低めで、国税庁が2025年9月に公表した「民間給与実態統計調査(令和6年分)」によれば、全国の民間給与所得者の平均年収は478万円に達し過去最高を更新しました(※2)。つまりタクシードライバーの平均年収は、全体平均より約59万円低い水準に留まっていることになります。数字上は平均的なサラリーマンより収入が少ないため、「誰でもタクシーで高収入」というわけではないと言えるでしょう。

もっとも、タクシー運転手の収入にはばらつきがあります。実績次第では700万円から800万円以上を稼ぐトップドライバーも存在し、高収入を得ている一部の事例が「タクシー運転手は稼げる」というイメージを押し上げている側面もあります。しかし平均的には400万円台前半であり、景気や社会情勢の影響も大きく受けます。例えば新型コロナ禍で需要が落ち込んだ令和3年(2021年)には、タクシー運転手の平均年収が280万円程度まで落ち込んだデータもあります(※1)。このように景気や需要に収入が左右されやすい点も踏まえる必要があります。

ただ近年は需要回復によって改善傾向にあり、令和5年は平均年収が前年比15パーセント超と大幅に増加しました。まだ全産業平均には届かないものの、その差は縮小しつつあります。

【参考URL】 ※1 全国ハイヤー・タクシー連合会「令和5年タクシー運転者の賃金・労働時間の現況」 https://driver-navi.com/column/taxi-drivers-salary/ ※2 国税庁「民間給与実態統計調査(令和6年分)」 https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/40b1cdd1ae6e4fa73a9c7476a378c29dcac3ed62

給与体系は歩合制が中心+最低賃金保障

タクシー運転手の給与体系は独特で、多くの会社が歩合制(出来高払い)を採用しています。乗務員が上げた営業収入(運賃売上)の一定割合が給与となる仕組みで、簡単に言えば「稼いだ分だけ給料も増える」体系です。会社ごとに売上に対する歩合率(賃金支給率)が決められており、売上の5割から6割程度を給与として支給する会社が多いとされています。このため自分の頑張り次第で収入を伸ばせる一方、売上が伸びなければ収入も減ってしまうリスクがあります。

もっとも、歩合制だからといって最低賃金を下回る給与になってしまうことはありません。法律上、たとえ給与が完全歩合であっても時間あたりに換算した金額が地域の最低賃金を下回ってはならないと規定されており(※3)、各タクシー会社は最低賃金を保障する「保障給」を設けています。極端に売上が少なかった月でも、会社は最低賃金相当額以上の給与を支払う義務があるため、歩合制でもゼロ給与にはならない仕組みです。実際、多くの求人で「〇ヶ月間は月◯万円の給与保障あり」といった新人向け保証制度が見られます。ただし保障給は各社で額が異なり、最低賃金ギリギリの場合もあり得ます。安心できる最低ラインは確保されているとはいえ、「保証ぎりぎりの収入」で終わらないよう努力は必要です。

なお給与体系は会社によって多少異なり、固定給+歩合給の併用制を採るところもあります。この場合、一定額の基本給(固定給)が毎月支給され、さらに売上に応じた歩合給が上乗せされます。固定給がある分だけ収入の安定性は高まりますが、その反面歩合率は純粋歩合制より低めに設定される傾向があります。完全歩合制か固定給併用かといった給与体系の違いも、転職先を選ぶ際には確認しておきたいポイントです。

【参考URL】 ※3 国土交通省「タクシー運転者に係る賃金規制の概要」 https://www.mlit.go.jp/common/000050420.pdf

地域でこんなに違う!都市部と地方の収入格差

タクシー運転手の年収は勤務エリアによって大きく異なることも知っておきましょう。一般的に都市部ほど「稼げる」傾向が顕著です。全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によれば、令和5年時点で東京都のタクシー運転手平均年収は約585.9万円にも達し、全国平均を大きく上回っています(※1)。同じ都市部でも大阪府は約487万円愛知県は約506万円と高水準で、400万円台後半以上の地域が多く見られます(※1)。背景には利用客の多さや営業機会の豊富さに加え、運賃水準が都市部では高めに設定されていることなどがあり、都市圏は高収入を得やすい環境と言えます。

一方、地方圏(地方都市や過疎地域)では平均年収が200万円から300万円台にとどまる地域も多く、都市部との格差が大きい状況です(※1)。令和5年データで最も低かった地域は高知県で約256.4万円にとどまりました(※1)。他にも青森県や秋田県など、平均年収が300万円前後の県が散見されます。地方ではタクシーの利用客自体が限られ、長距離の乗客も少ないため売上を伸ばしにくいこと、待機時間が長くなりがちなことなどから、どうしても収入水準が低めになります。

なお、地域別のデータについては最新情報の確認が重要です。たとえば以前は石川県や福井県の平均年収が230万円台とも言われましたが、実際には石川県で約315万円、福井県で約341万円と報告されており、過去に流布していた数値は誤りでした。エリアによっては統計の更新や景気変動で年収水準が変化しますので、最新データを参照することが大切です。

こうした地域格差から、「どこで働くか」によって稼げる額が大きく変わることがわかります。現在地方在住で転職を考えている方の場合、地元で働くのと都市部に出て働くのでは収入に差が出る可能性があります。ただし都会で働けば常に良いとも限らず、生活コスト(住居費など)や競争環境の違いも考慮すべきです。収入面だけでなく生活コストや自分の生活基盤を総合的に考え、場合によっては「収入アップのためにエリアを変える」決断も視野に入れると良いでしょう。

勤務形態とシフトの実態(隔日勤務・日勤・夜勤)

タクシー業界には独特な勤務サイクルがあり、代表的なのが「隔日勤務」です。隔日勤務とは1回の乗務が2日間にまたがる長時間勤務となり、その代わり翌日が非番(明け休み)になるサイクルの働き方です。具体的には1回の勤務拘束時間は最大21時間以内(※2024年4月の法改正後は22時間以内、2回乗務の平均で21時間以内)と定められており、勤務終了後は連続20時間以上(※改正後は22時間以上)の休息を取らなくてはなりません。例えば朝7時から深夜翌1時頃まで乗務したら、翌日は丸一日休みにするという具合です。この隔日勤務は都市部の大手タクシー会社などで多く採用されており、月の勤務日数はおよそ12日から13日程度となります。1回の乗務が長い分、まとめて稼いでまとめて休むというメリハリのある働き方と言えるでしょう。

隔日勤務以外にも、日勤専門(昼間だけ働く)や夜勤専門(夜間帯だけ働く)といった勤務形態があります。日勤の場合、1日の拘束時間は概ね13時間以内(原則として法定上限は13時間、特殊な場合でも最大15時間から16時間程度)に収まり、週5日程度の勤務になるケースが多いです。夜勤も基本的な枠組みは日勤と同様ですが、深夜割増料金が適用される時間帯を狙って効率よく稼げる反面、生活リズムが夜型になり健康面の負担も増えがちです。それぞれメリット・デメリットがあるため、自分の体調や家族の状況などに合わせてシフトを選択することが可能です。近年では高齢ドライバーや子育て中のドライバー向けに短時間勤務制度を導入するタクシー事業者もあり、週3日から4日勤務や1日数時間のみのパート勤務など、多様な働き方が広がりつつあります。

勤務時間の上限規制にも触れておきます。タクシー運転手は他の自動車運転業務と同様、「改善基準告示」という厚生労働省の規定によって労働時間の上限が細かく定められています。例えば1ヶ月の総拘束時間は隔日勤務で原則262時間以内(2024年4月以降も据え置き)とされ、日勤勤務でも原則288時間以内です。1日の最大拘束時間も、日勤なら13時間(特例でも16時間まで)、隔日勤務なら2暦日で最大22時間以内などと規制されています。これらは過重労働による事故防止やドライバーの健康確保のためのルールであり、事業者には遵守が義務付けられています。実際には乗務前後のアルコールチェック休憩・仮眠時間の確保など、安全に配慮した運行管理が行われています。

勤務シフトと収入の関係も押さえておきましょう。隔日勤務は1回の勤務時間が長い分、その日の売上を最大化しやすく、走った分だけ稼げる代わりに翌日はしっかり休めます。ただし月の勤務日数は半分程度になるため、体力面と収入面のバランスがポイントです。一方、日勤・夜勤は勤務日数が多く「毎日コツコツ働く」スタイルになります。夜勤は深夜需要を狙えるため高収入も期待できますが、不規則勤務による体への負担も考慮が必要です。自分の健康状態や生活リズムに合ったシフトを選ぶことが、長く安定して稼ぎ続けるコツと言えるでしょう。

最後に、休日や有給休暇についても触れておきます。タクシー運転手にも当然ながら法定の有給休暇や公休日がありますが、その取り方は勤務形態により独特です。隔日勤務の場合、明け休み(隔日勤務特有の翌日休み)に加えて、月に数日から週1回程度の公休が設けられるのが一般的です。シフト上、平日が公休になることも多いですが、その分役所手続きや病院受診に行きやすいといった平日休みの利点もあります。求人票を見る際には公休日数や有給取得率にも目を通し、無理なく働ける環境かどうか確認すると良いでしょう。

タクシー業界へ転職する際の注意点(資格・会社選び・健康・将来性)

タクシードライバーへの転職を検討するにあたり、押さえておきたいポイントや注意点をまとめます。

二種免許の取得条件

タクシー運転手として働くには第二種運転免許(いわゆる二種免許)が必要です。通常は「満21歳以上、かつ普通免許取得後3年以上」の受験資格が求められますが、近年の道路交通法改正により条件が一部緩和されています。特例教習を修了すれば「19歳以上、かつ運転経験1年以上」でも二種免許試験を受けられるようになりました(※4)。つまり若年層でも一定の教習を受ければ早期に二種免許取得が可能になっています。また視力・聴力などの適性基準もありますが、これらは教習所での事前適性検査で確認できます。

普通免許を持っていれば、多くのタクシー会社は入社前研修で二種免許取得をサポートしており、教習費用を会社が負担してくれるケースも少なくありません。転職を考えたらまずは二種免許の取得(または取得見込み)が前提となりますが、会社の支援制度も積極的に活用しましょう。

地域ごとの資格要件

かつて東京や大阪など一部地域では、二種免許取得後に地理試験(営業エリアの地理知識に関する筆記試験)に合格する必要がありました。しかし2024年2月に東京都・大阪府などでこの地理試験が廃止され、現在は法令・安全・接遇に関する試験のみとなっています。規制緩和によって主要都市でも新人ドライバーが参入しやすくなったと言えますが、その裏返しとして地理の自己研鑽がより重要になります。試験がなくても、実際の営業では道路や土地勘の習熟度が収入に直結します。未経験で都市部のタクシー会社に挑戦する方は、ナビアプリ等を駆使しつつ早期に地理を把握する努力が必要でしょう。

会社選びのポイント

タクシー業界への転職では、会社ごとの労働条件の違いを見極めることが重要です。例えば次のような点に注目しましょう。

給与体系:前述のとおり歩合率や保障給の有無は会社ごとに異なります。求人票や面接時にしっかり確認しましょう。 ・勤務体系:隔日勤務中心なのか、日勤のみ可能か、夜勤専門コースがあるか等、自分の希望する働き方と合っているか確認が必要です。 ・研修制度:未経験者向け研修(地理研修、接客研修、安全運転研修など)の充実度にも会社差があります。教育体制が整っている会社は安心です。 ・福利厚生:社会保険完備はもちろん、社員寮(社宅)の有無、二種免許取得費用補助、新人期間の給与保証(例:入社後○ヶ月は月◯万円保証)などの制度もチェックポイントです。

こうした要素を総合的に勘案し、無理なく稼げる環境を提供してくれる会社を選ぶことが転職成功のカギです。

健康管理と働き方

タクシー運転手は長時間の運転業務となるため、自身の健康管理も非常に重要です。夜勤や不規則な生活リズムになりがちで、睡眠不足や生活習慣病のリスクもあります。定期的な健康診断はもちろん、十分な睡眠時間の確保や適度な運動など、ドライバー自身が意識してコンディションを整える必要があります。また会社によっては乗務員向けの仮眠室を完備したり、メンタルヘルスケアに取り組んでいるところもあります。安心して長く働くために、そういった健康サポート体制の有無も会社選びの参考にすると良いでしょう。

業界の将来性

タクシー業界は現在、深刻な人手不足に直面しており、求人の多さが際立っています。厚生労働省の統計によれば、タクシー運転者の有効求人倍率は令和3年9月時点で3.99倍と全職種平均(当時約1.2倍)を大きく上回っていました(※5)。さらに直近では9倍超にまで上昇しており、令和6年度の全国平均で有効求人倍率9.11倍という極めて高い水準になっています(※6)。これは1人の求職者に対して9件以上の求人がある計算で、タクシードライバーの採用ニーズが非常に高い(言い換えれば転職希望者にとって売り手市場である)ことを意味します。また今後を見ても、現役ドライバーの高齢化による大量退職が見込まれる一方で、観光需要の増加や高齢者の移動手段としての需要など一定のタクシー需要は続くと考えられます。業界全体としてはしばらく安定した求人市場が継続する見通しで、「今がチャンス」の状況です。転職を検討する際は、こうした業界動向も頭に入れておきましょう。

【参考URL】 ※4 福岡県警察「受験資格特例教習について」 https://www.police.pref.fukuoka.jp/kotsu/unshi/jyukennsikaku.html ※5 RKB毎日放送「街はにぎわい取り戻したのに・・・タクシーがつかまらない コロナ禍で職場を離れた運転手たち」 https://rkb.jp/contents/202309/202309067771/2/ ※6 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)タクシー運転手」 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/188

まとめ

ここまでデータをもとに見てきたように、タクシー運転手の平均年収は約419万円と全国平均を下回り、「稼げる」という評判は一部の高収入ドライバーの事例に基づくものだと分かりました(※1)。収入は地域や勤務形態によって大きな差があり、誰もが安定して高収入を得られる職種ではないのが実情です。ただし近年は需要回復により賃金も改善傾向にあり、努力次第で高収入を実現している人も存在します。大切なのはデータに基づき現実的な収入像を把握することです。「稼げる」という言葉に振り回されず、公的統計や信頼できる情報から業界の実態をしっかり理解した上で、転職の判断材料にしましょう。

初めてのタクシー転職で不安がある方こそ、『GOジョブ』の活用がおすすめです。『GOジョブ』は、タクシーアプリ『GO』を展開するGO株式会社のグループ会社である、GOジョブ株式会社が運営するドライバー特化の転職支援サービスです。二種免許取得の相談から、地域ごとのおすすめ企業紹介、応募書類の準備や面接対策までワンストップでサポートいたします。業界に詳しいキャリアアドバイザーが在籍し、あなたの希望(高収入・好待遇・勤務地など)にマッチした最適な転職先を提案してくれます。転職のプロと二人三脚で準備を進めれば、不安や疑問を解消しながら安心して新たな一歩を踏み出せるでしょう。

『GOジョブ』の利用は完全無料で、登録は1分で完了します。『GO』アプリを提供するGO株式会社グループのGOジョブ株式会社が運営しているため、安心感と長年の企業とのパイプがあります。ぜひ『GOジョブ』を活用し、タクシードライバーへの転職を成功させてください。