最終更新日:2025年12月22日

タクシー運転手への転職を考えている方にとって、最も気になるのが「給料の仕組み」ではないでしょうか。タクシー業界は一般的な企業とは異なる独特の給与体系を採用しており、その仕組みを理解することが収入アップへの第一歩となります。
タクシー運転手の給料は、基本的に「歩合制」を中心とした体系になっています。つまり、頑張れば頑張るほど収入が増える可能性がある一方で、売上が少なければ収入も減少するという特徴があります。この歩合制にはいくつかの種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
本記事では、タクシー運転手の給料の仕組みについて、賃金体系の種類から平均年収、収入を増やすためのコツまで、詳しく解説していきます。これからタクシー業界への転職を考えている方はもちろん、すでに働いている方にとっても、自分の給与体系を見直すきっかけになれば幸いです。
タクシー運転手の給料は、一般的なサラリーマンとは大きく異なる仕組みになっています。ここでは、その基本的な構造について説明します。
タクシー運転手の給料は、「歩合制」を基本としています(※1)。歩合制とは、売上(営業収入)に応じて給料が変動する仕組みのことです。具体的には、運転手が1か月間に稼いだ運賃収入に対して、一定の割合(歩合率)を掛けた金額が給料として支払われます。
この歩合率は会社やタクシーの種類によって異なりますが、一般的には売上の40~60%程度に設定されていることが多いです。例えば、月の売上が50万円で歩合率が50%の場合、歩合給は25万円となります。
歩合制のメリットは、自分の努力次第で収入を増やせる点です。効率的に営業を行い、売上を伸ばせば、それだけ給料も増えます。一方で、売上が少なければ収入も減少するため、収入が不安定になりやすいというデメリットもあります。
多くのタクシー会社では、完全歩合制ではなく、「固定給」と「歩合給」を組み合わせた給与体系を採用しています。固定給は、売上に関係なく毎月支払われる基本給のことで、最低限の収入を保証する役割があります。
この固定給と歩合給の組み合わせ方によって、後述する「A型賃金」「B型賃金」「AB型賃金」という3つの賃金体系に分類されます。それぞれの特徴については、次の章で詳しく解説します。
基本的な給料(固定給+歩合給)に加えて、タクシー運転手にはさまざまな追加収入の機会があります。
まず、お客様から直接いただく「チップ」があります。日本ではチップの文化が浸透していないため、頻繁にもらえるわけではありませんが、サービスが良ければお客様から感謝の気持ちとしてチップをいただくこともあります。
また、深夜(22時~翌5時)に営業する場合は「深夜手当」が支給されます(※2)。深夜の運賃は通常の2割増しになるため、その分収入も増えやすくなります。
その他、会社によっては「無事故手当」「皆勤手当」「待機手当」などの各種手当が設けられている場合もあります。これらの手当をうまく活用することで、基本給与にプラスアルファの収入を得ることができます。
【参考URL】 ※1 出典:厚生労働省「タクシー運転者の賃金制度等について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002k7dz-att/2r9852000002k7hj.pdf ※2 出典:厚生労働省「労働基準法」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/index.html
タクシー業界には、大きく分けて「A型賃金」「B型賃金」「AB型賃金」という3つの賃金体系があります(※3)。それぞれの特徴とメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
A型賃金は、「固定給」と「歩合給」を組み合わせた賃金体系です。毎月決まった額の基本給が支給され、それに加えて売上に応じた歩合給が上乗せされます。
A型賃金の最大のメリットは、収入が安定しやすい点です。売上が少ない月でも固定給があるため、最低限の収入は保証されます。そのため、タクシー業界未経験者や、安定した収入を重視する方に向いています。
ただし、A型賃金の場合、歩合率は他の賃金体系に比べて低めに設定されていることが多いです。そのため、高収入を目指す場合は、相当な売上を上げる必要があります。
具体的な給与例としては、固定給20万円+歩合給(売上の40%)といった形になります。例えば月の売上が50万円の場合、固定給20万円+歩合給20万円(50万円×40%)=合計40万円の収入となります。
B型賃金は、固定給がなく、完全に売上に応じた歩合給のみで給料が決まる賃金体系です。売上の一定割合(通常50~60%程度)が給料として支払われます。
B型賃金の最大のメリットは、歩合率が高いため、売上が多ければ高収入を得られる点です。営業力に自信がある方や、高収入を目指す方に向いています。
一方で、固定給がないため、売上が少ない月は収入も大きく減少します。特に、タクシー業界に転職したばかりで営業ノウハウが身についていない時期は、収入が不安定になりがちです。そのため、ある程度の経験を積んでから選択するのが賢明でしょう。
また、B型賃金を採用しているタクシー会社は、労働基準法に基づく最低賃金を保証する必要があります(※4)。売上が極端に少なく、歩合給だけでは最低賃金を下回る場合は、会社が差額を補填する仕組みになっています。
AB型賃金は、A型とB型の中間的な性質を持つ賃金体系です。基本的には歩合制ですが、一定の売上に達するまでは固定給が保証され、それを超えると完全歩合制に移行するという仕組みになっています。
具体的には、「足切り」と呼ばれる売上基準が設定されており、この基準を下回る場合は固定給が支給されます。逆に、足切りを超えた場合は、売上に対する高い歩合率で給料が計算されます。
AB型賃金のメリットは、A型とB型の良いところを組み合わせている点です。売上が少ない月でも最低限の収入が保証されつつ、売上が多い月は高い歩合率で収入を伸ばせます。
ただし、足切りの基準が厳しい場合、常に基準を超えるプレッシャーを感じることになります。また、足切りを超えた場合の歩合率の計算方法が複雑なこともあり、給料の仕組みを理解するのに時間がかかる場合もあります。
どの賃金体系が最適かは、個人の状況や目標によって異なります。
タクシー業界未経験者や、安定した収入を重視する方には「A型賃金」がおすすめです。固定給があるため、営業ノウハウを学びながら安心して働けます。
一方、営業力に自信があり、高収入を目指す方には「B型賃金」や「AB型賃金」が向いています。特にAB型賃金は、安定性と収入アップの可能性を両立できるため、経験を積んだドライバーに人気があります。
タクシー会社を選ぶ際は、求人情報で賃金体系を確認し、自分に合ったものを選ぶことが大切です。また、会社によっては入社後に賃金体系を変更できる場合もあるので、面接時に確認しておくと良いでしょう。
【参考URL】 ※3 出典:国土交通省「タクシー運転者の労働条件について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000046.html ※4 出典:厚生労働省「最低賃金制度について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
タクシー運転手の収入は、賃金体系や勤務形態、地域によって大きく異なります。ここでは、全国平均のデータをもとに、タクシー運転手の収入実態を見ていきましょう。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、タクシー運転手の平均年収は約350万円程度となっています(※5)。ただし、これはあくまで全国平均であり、地域や会社、個人の営業力によって大きな差があります。
月収に換算すると、平均で約25~30万円程度です。ボーナス(賞与)については、タクシー業界では支給されない会社も多く、支給される場合でも年間数十万円程度が一般的です。
年齢別に見ると、20代では平均年収300万円前後、30代で350万円前後、40代以降で400万円前後となっています。ただし、これは平均値であり、営業力の高いドライバーであれば、年齢に関係なく500万円以上の年収を得ている方も少なくありません。
タクシー運転手の収入は、地域によって大きな差があります。一般的に、都市部の方が地方に比べて収入が高い傾向にあります。
東京都内のタクシー運転手の平均年収は約450万円程度と、全国平均を大きく上回っています。これは、都心部では人口密度が高く、タクシーの需要が多いためです。特に、六本木や銀座、新宿などの繁華街や、主要なビジネス街では、高い売上を上げやすい環境が整っています。
大阪や名古屋などの大都市圏でも、平均年収は400万円前後と、全国平均よりも高い水準となっています。一方、地方都市では平均年収が300万円を下回る地域もあり、都市部との格差が大きくなっています。
また、同じ地域でも、観光地や空港周辺など、タクシーの需要が高いエリアで営業するドライバーは、より高い収入を得られる傾向にあります。
タクシー運転手の勤務形態には、主に「昼勤」「夜勤」「隔日勤務」の3つがあり、それぞれで収入が異なります(※6)。
昼勤は、通常の会社員と同じように日中に勤務する形態です。勤務時間は9時~18時頃が一般的で、規則正しい生活を送れるメリットがあります。ただし、昼間は深夜割増がないため、収入は他の勤務形態に比べてやや低めになる傾向があります。平均月収は20~25万円程度です。
夜勤は、夜間から深夜にかけて勤務する形態です。22時以降は運賃が2割増しになるため、効率的に稼ぎやすくなります。また、終電後の時間帯は需要が高まるため、売上を伸ばしやすいメリットがあります。平均月収は25~35万円程度と、昼勤よりも高い傾向にあります。
隔日勤務は、1回の勤務時間が長い(通常18~20時間程度)代わりに、勤務後は丸1日休みになる形態です。タクシー業界では最も一般的な勤務形態で、多くのドライバーが選択しています。長時間勤務のため体力が必要ですが、効率的に売上を伸ばしやすく、平均月収は30~40万円程度と、最も高い傾向にあります。
タクシー業界では、経験によって収入に大きな差が生まれます。
入社直後の新人ドライバーは、地理や営業ノウハウが身についていないため、売上を伸ばすのに苦労することが多いです。最初の数か月は月収20万円前後にとどまることも珍しくありません。
しかし、3か月~半年程度経験を積むと、地理感覚が身につき、効率的な営業方法も分かってくるため、徐々に売上が安定してきます。この段階で月収25~30万円程度になることが一般的です。
1年以上の経験を積んだベテランドライバーになると、効率的な営業ルートやお客様が多い時間帯・場所を熟知しているため、安定して高い売上を維持できます。月収35万円以上、年収では450万円以上を稼ぐドライバーも多く存在します。
さらに、トップクラスのドライバーになると、月収50万円以上、年収600万円以上を稼ぐことも可能です。これらのドライバーは、単に長時間働くだけでなく、戦略的な営業を行い、効率的に売上を伸ばしています。
【参考URL】 ※5 出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html ※6 出典:国土交通省「タクシー運転者の労働時間等について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000001.html
タクシー運転手として収入を増やすためには、ただ長時間働くだけでなく、戦略的な営業が必要です。ここでは、実際に高収入を得ているドライバーが実践している具体的なコツを紹介します。
収入を増やすための最も基本的なコツは、需要の高いエリアで営業することです。
都市部では、ビジネス街、繁華街、駅周辺、ホテル周辺などが主要な営業エリアとなります。特に、東京であれば六本木、銀座、新宿、渋谷などの繁華街は、深夜でも需要が途切れることがありません。
また、時間帯によっても需要の高いエリアは変わります。朝の通勤時間帯は住宅街から駅やオフィス街へ向かうお客様が多く、夕方以降は逆に駅からの帰宅客が増えます。深夜は繁華街での需要が高まります。
このように、時間帯に応じて営業エリアを変えることで、効率的に売上を伸ばすことができます。ベテランドライバーは、自分なりの「稼げるルート」を確立しており、それが収入の差につながっています。
タクシーの需要には、明確なピークタイムが存在します。このピークタイムを逃さずに営業することが、収入アップの鍵となります。
平日の主なピークタイムは、朝の通勤時間帯(7時~9時頃)、昼休み時間帯(12時~13時頃)、帰宅時間帯(18時~20時頃)、そして終電後の深夜帯(24時以降)です。
特に、終電後の深夜帯は運賃が2割増しになるうえ、需要も非常に高いため、効率的に稼げる時間帯です。ただし、深夜営業には体力が必要なため、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
週末や祝日は、平日とは異なる需要パターンになります。金曜日や土曜日の夜は、繁華街での需要が特に高まります。また、イベントや祭りが開催される日は、その周辺エリアでの需要が急増します。
こうした需要の波を理解し、適切なタイミングで営業することで、売上を大きく伸ばすことができます。
近年、タクシー業界では配車アプリの利用が急速に広がっています。『GO』などの配車アプリを活用することで、空車時間を減らし、効率的に営業できます。
配車アプリのメリットは、お客様を探して走り回る必要がなく、待機している間に配車依頼が入る点です。特に、需要の少ない時間帯や地域では、配車アプリからの依頼が収入の大きな柱となります。
また、配車アプリでは、お客様の行き先が事前に分かるため、効率的なルートを計画できます。さらに、アプリ経由のお客様は、一般的に評価システムを気にするため、トラブルが少ないというメリットもあります。
配車アプリを効果的に活用するためには、アプリの仕組みや特徴を理解することが大切です。例えば、『GO』では、評価の高いドライバーに優先的に配車される仕組みがあるため、質の高いサービスを提供し続けることが重要です。
タクシー運転手として安定した収入を得るためには、「固定客」を獲得することが非常に効果的です。
固定客とは、あなたの名刺を持ち、必要なときに直接連絡してくれるお客様のことです。固定客を増やすことで、空車時間を減らし、安定した売上を確保できます。
固定客を獲得するためには、質の高いサービスを提供することが第一です。丁寧な運転、清潔な車内、親切な対応など、お客様に「また乗りたい」と思ってもらえるよう心がけましょう。
また、ビジネス客をターゲットにすることも効果的です。定期的にタクシーを利用する企業の役員や営業マンなどは、気に入ったドライバーを継続的に利用する傾向があります。
名刺交換の際は、自分の連絡先だけでなく、配車アプリのIDなども伝えると、お客様がより気軽に連絡しやすくなります。
収入を大きく伸ばすためには、長距離のお客様を獲得することも重要です。
空港への送迎は、長距離客の代表例です。羽田空港や成田空港への送迎は、都心部から1万円以上の運賃になることも多く、1回で大きな売上を得られます。
空港客を獲得するためには、早朝の営業が効果的です。多くの国際便は午前中に出発するため、朝5時~8時頃にホテル周辺で営業すると、空港へ向かうお客様を乗せられる可能性が高まります。
また、ビジネス客の中には、地方都市への出張で長距離移動をする方もいます。例えば、東京から横浜、千葉、埼玉などへの長距離移動は、高速道路を利用すれば効率的に稼げます。
長距離客を獲得するためには、快適な車内環境を整えることも大切です。長時間の移動になるため、空調や座席の快適さ、静かな走行など、お客様がリラックスできる環境を提供しましょう。
タクシー運転手の収入は、接客スキルによっても大きく変わります。
基本的な接客マナー、例えば挨拶、言葉遣い、身だしなみなどは、お客様の第一印象を左右します。「また乗りたい」と思ってもらえるような丁寧な対応を心がけましょう。
また、お客様との会話も重要なスキルです。ただし、すべてのお客様が会話を求めているわけではありません。お客様の様子を観察し、会話を楽しみたい方には積極的に話しかけ、静かに過ごしたい方には必要最低限のコミュニケーションにとどめるなど、柔軟に対応することが大切です。
特に、ビジネス客の場合、車内で仕事をしたい方も多いため、静かな環境を提供することが喜ばれます。逆に、観光客の場合は、地域の情報を提供することで満足度を高められます。
さらに、トラブル対応のスキルも重要です。道順についてのクレームや、料金に関する疑問など、さまざまな場面で適切に対応できることが、プロのドライバーとして求められます。
お客様に快適に過ごしていただくためには、車内環境の整備が欠かせません。
まず、車内の清潔さは最も基本的な要素です。定期的に車内を清掃し、常に清潔な状態を保ちましょう。特に、シートやフロアマット、窓ガラスなどは、汚れが目立ちやすいため、こまめに掃除することが大切です。
また、車内の臭いにも注意が必要です。芳香剤を使用する場合は、強すぎない香りを選びましょう。タバコの臭いやエアコンの臭いなども、お客様に不快感を与える原因となるため、定期的にチェックが必要です。
温度管理も重要です。季節に応じて適切な温度に調整し、お客様に「暑い」「寒い」と言われる前に調整できるよう心がけましょう。
その他、スマートフォンの充電ケーブルを用意したり、ティッシュを常備したりするなど、ちょっとした気配りが、お客様の満足度を高めます。こうした細やかな配慮が、チップや固定客の獲得につながることも少なくありません。
【参考URL】 ※7 出典:国土交通省「タクシー事業について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000001.html
タクシー運転手として働くには、給料の仕組みを理解するだけでなく、労働条件や必要な資格についても知っておく必要があります。
タクシー運転手として働くためには、「普通自動車第二種運転免許」(二種免許)が必要です(※8)。二種免許は、お客様を乗せて運転する職業ドライバーに必須の資格で、普通免許とは別に取得する必要があります。
二種免許を取得するための条件は、以下の通りです。
まず、年齢が満21歳以上であることが必要です。また、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許のいずれかを取得してから3年以上経過していることも条件となります。
二種免許の取得方法には、「指定自動車教習所に通う方法」と「運転免許試験場で直接受験する方法」の2つがあります。多くの方は、教習所に通う方法を選択します。
教習所に通う場合、費用は20~25万円程度、期間は2週間~1か月程度が目安です。ただし、多くのタクシー会社では、入社後に二種免許の取得費用を全額または一部負担してくれる制度があります(※9)。そのため、まだ二種免許を持っていない方でも、タクシー業界への転職は可能です。
東京、大阪、神奈川の一部地域でタクシー運転手として働く場合は、二種免許に加えて「地理試験」に合格する必要があります(※10)。
地理試験は、営業エリア内の主要な道路、施設、ランドマークなどの知識を問う試験です。お客様を目的地まで確実にお送りするためには、地理の知識が不可欠であるため、このような試験が設けられています。
地理試験の難易度は地域によって異なりますが、一般的に東京の試験が最も難しいとされています。合格率は30~40%程度で、しっかりとした準備が必要です。
多くのタクシー会社では、入社後に地理試験の勉強をサポートしてくれる研修制度があります。また、会社によっては、地理試験に合格するまでの期間も給料を支給してくれる場合があります。
タクシー運転手の労働時間は、勤務形態によって大きく異なります(※11)。
昼勤や夜勤の場合、1日の労働時間は8~9時間程度で、週休2日制が一般的です。一般的な会社員と同じような勤務スケジュールになるため、ワークライフバランスを保ちやすいメリットがあります。
一方、隔日勤務の場合、1回の勤務時間は18~20時間程度と長くなりますが、勤務後は丸1日以上の休みが取れます。月の勤務日数は11~13日程度となり、実質的な休日が多くなります。
タクシー業界では、労働基準法に基づいて、労働時間や休憩時間が厳格に管理されています。特に、隔日勤務の場合は、連続勤務後に必ず20時間以上の休息時間を取ることが義務付けられています。
また、年次有給休暇についても、一般企業と同様に法定日数が付与されます。入社後6か月経過すると、年10日の有給休暇が取得できるようになります。
タクシー会社に雇用される場合、一般企業と同様に社会保険に加入します(※12)。
具体的には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つの社会保険に加入します。これらの保険料は、会社と従業員が折半で負担するため、個人事業主と比べて保険料の負担が軽くなります。
福利厚生については、会社によって内容が大きく異なります。一般的な福利厚生としては、制服の貸与、健康診断の実施、退職金制度などがあります。
また、会社によっては、社員寮や借り上げ社宅を用意している場合もあります。特に、地方から上京してタクシー運転手として働きたい方にとって、住居の補助は大きなメリットとなります。
その他、無事故表彰制度、永年勤続表彰制度、慶弔見舞金制度など、さまざまな福利厚生制度を設けている会社もあります。
タクシー運転手として働くうえで、最も注意しなければならないのが、交通事故や交通違反のリスクです。
事故を起こした場合、会社の規定によっては、修理費用の一部を負担しなければならない場合があります。また、重大な事故の場合は、免許停止や解雇になる可能性もあります。
交通違反についても同様で、違反を繰り返すと、減給や免許停止などのペナルティが課されます。特に、スピード違反や信号無視などの重大な違反は、厳しく処分されます。
そのため、タクシー運転手には、一般のドライバー以上に高い安全意識が求められます。常に安全運転を心がけ、交通ルールを遵守することが、長くタクシー運転手として働き続けるための基本です。
多くのタクシー会社では、定期的に安全運転講習を実施しており、ドライバーの安全意識向上に努めています。こうした講習に積極的に参加し、安全運転のスキルを磨くことが大切です。
【参考URL】 ※8 出典:警察庁「運転免許制度について」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ ※9 出典:国土交通省「タクシー事業者における人材確保の取組」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000002.html ※10 出典:国土交通省「タクシー運転者登録制度について」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk3_000003.html ※11 出典:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/ ※12 出典:厚生労働省「社会保険制度について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shakaihoken/
タクシー運転手として収入を増やすためには、自分に合った会社を選ぶことも重要です。ここでは、会社選びのポイントを紹介します。
まず最も重要なのが、賃金体系の確認です。前述の通り、A型、B型、AB型のどの賃金体系を採用しているかによって、収入の安定性や伸びしろが大きく変わります。
求人情報を見る際は、以下の点を必ずチェックしましょう。
・賃金体系の種類(A型、B型、AB型) ・固定給の金額(A型、AB型の場合) ・歩合率(売上の何%が給料になるか) ・足切りの基準(AB型の場合) ・各種手当(深夜手当、無事故手当など)
また、実際の平均月収や年収例も確認しましょう。「月収40万円可能」といった表記だけでなく、実際に働いているドライバーの平均収入を聞くことが大切です。
面接の際には、収入に関する質問を遠慮なくしましょう。信頼できる会社であれば、給与体系や実際の収入例について、丁寧に説明してくれるはずです。
特にタクシー業界未経験者の場合、会社のサポート体制が充実しているかどうかが、成功の鍵を握ります。
確認すべきポイントは以下の通りです。
・二種免許取得のサポート(費用負担の有無) ・地理試験対策の研修制度 ・実務研修の期間と内容 ・先輩ドライバーによるOJT制度 ・定期的な安全運転講習
特に、入社後の研修期間中に給与が支給されるかどうかは重要なポイントです。研修期間は通常1~2か月程度ですが、この間の収入が保証されていないと、経済的に厳しくなる可能性があります。
また、配車アプリの使い方や、効率的な営業方法を教えてくれる会社かどうかも確認しましょう。経験豊富な先輩ドライバーから直接ノウハウを学べる環境があれば、早期に売上を伸ばすことができます。
タクシー運転手として働くうえで、車両の状態は非常に重要です。
車両が清潔で整備が行き届いているかどうかは、お客様の満足度に直結します。また、故障の少ない車両であれば、営業中のトラブルも減り、効率的に働けます。
会社選びの際は、以下の点を確認しましょう。
・車両の新しさ(導入年式) ・車種(高級セダン、ミニバンなど) ・定期的な整備・点検の実施 ・車内清掃のサポート ・カーナビやドライブレコーダーなどの装備
特に、配車アプリ対応のタブレットが車両に装備されているかどうかは、収入に大きく影響します。『GO』などの配車アプリを活用するためには、専用のタブレットが必要だからです。
ライフスタイルに合った勤務形態を選べるかどうかも、重要なポイントです。
例えば、家庭の事情で夜間の勤務が難しい場合は、昼勤が選択できる会社を選ぶべきです。逆に、高収入を目指したい場合は、隔日勤務や夜勤が選択できる会社が良いでしょう。
また、会社によっては、入社後に勤務形態を変更できる場合もあります。最初は昼勤で働いて慣れてから、隔日勤務に切り替えるといった柔軟な対応が可能な会社であれば、長く働き続けやすくなります。
さらに、有給休暇の取得しやすさも確認しましょう。休暇を取りやすい環境であれば、ワークライフバランスを保ちながら働けます。
実際に働いている人の評判や口コミは、会社選びの重要な判断材料になります。
インターネット上の求人サイトや口コミサイトで、その会社の評判を調べてみましょう。ただし、ネット上の情報は偏っている場合もあるため、複数の情報源から確認することが大切です。
可能であれば、実際にその会社で働いているドライバーに話を聞くのが最も確実です。営業所の前で待機しているドライバーに声をかけてみるのも一つの方法です。
また、会社の規模や歴史も参考になります。長年営業している大手のタクシー会社であれば、一定の信頼性があると考えられます。ただし、中小規模の会社でも、優れたサポート体制を持つ会社は多く存在します。
【参考URL】 ※13 出典:全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー事業について」 https://www.taxi-japan.or.jp/
タクシー運転手の給料は、歩合制を中心とした独特の仕組みになっています。A型、B型、AB型という3つの賃金体系があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分の状況や目標に合わせて、最適な賃金体系を選ぶことが大切です。
全国平均の年収は約350万円程度ですが、地域や営業力、経験によって大きな差があります。都市部では平均を大きく上回る収入を得られる可能性があり、トップクラスのドライバーであれば年収600万円以上も可能です。
収入を増やすためには、効率的な営業エリアの選択、ピークタイムでの営業、配車アプリの活用、固定客の獲得、接客スキルの向上など、さまざまな工夫が必要です。ただ長時間働くだけでなく、戦略的に営業することが重要です。
また、タクシー運転手として働くためには、二種免許が必要であり、東京などの一部地域では地理試験にも合格する必要があります。多くの会社では、これらの取得をサポートしてくれる制度があるため、未経験者でも挑戦しやすい環境が整っています。
会社選びも収入に大きく影響します。賃金体系、サポート体制、車両の管理体制、勤務形態の柔軟性など、さまざまな観点から比較検討し、自分に合った会社を選びましょう。
タクシー業界は、努力次第で収入を伸ばせる可能性のある魅力的な仕事です。本記事で紹介した給料の仕組みや収入アップのコツを参考に、ぜひタクシー運転手としてのキャリアを検討してみてください。
タクシー業界への転職を考えている方は、『GOジョブ』をご活用ください。『GOジョブ』は、タクシー業界専門の求人情報サイトで、全国各地のタクシー会社の求人情報を豊富に掲載しています。賃金体系や勤務形態、サポート体制など、詳細な情報を確認しながら、自分に最適な会社を見つけることができます。また、『GO』の配車アプリと連携しているタクシー会社の情報も充実しているため、効率的に稼げる環境で働きたい方にもおすすめです。