最終更新日:2025年10月03日
近年、政府による働き方改革で副業解禁の流れが進み、タクシードライバーという職業にも副業の波が押し寄せています。副収入を得たりスキルの幅を広げたりしたいと考える人が増える一方、「タクシー運転手は副業できるのか」「どう始めればいいのか」と不安や疑問を抱く方も多いでしょう。本記事では副業としてタクシー運転手を始めたい人と、タクシードライバーとして別の副業を持ちたい人の両方を対象に、始め方やメリット・注意点を網羅的に解説します。
日本では公務員を除き、副業そのものを禁止する法律はありません(※1)。つまり民間のタクシードライバーは法律上、副業が可能です。ただし、公務員の場合は国家公務員法・地方公務員法により営利目的の副業が原則禁止されています。
実際に副業できるかは勤務先の就業規則が決め手となります。多くの企業では従来、副業禁止規定がありましたが、政府の働き方改革推進に伴いモデル就業規則が2018年1月に改定され、副業禁止条項が削除されました(※2)。現在は「労務提供に支障がない限り副業を認める」趣旨の規定が設けられ、各社もそれに倣って副業容認へと動きつつあります。タクシー業界でも副業を許可する会社が増加傾向にあります。
政府は2018年以降、副業・兼業を推進する方針を明確にしました(※3)。実際、厚生労働省は2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、2020年9月および2022年7月にも内容を改定して、副業ルールの明確化やキャリア形成支援の観点を盛り込みました(※4)。タクシー業界も例外ではなく、副業解禁の流れを受けて副業OKの求人やWワーク歓迎のタクシー会社が登場しています。
タクシー業界には柔軟な働き方の選択肢があります。正社員のフルタイム乗務員だけでなく定時制乗務員という制度があり、正社員の所定労働時間の3/4以下の勤務形態で、週1日から勤務可能です。多くのタクシー会社がこの定時制制度を設けており、本業を持つ人が副業でタクシー運転手として働くことや、逆にタクシードライバーが空き時間に別の仕事をすることを可能にしています。
以上のように、法律面では問題なく、会社規則も緩和されつつあるため、タクシードライバーは副業可能な職業と言えます。ただし実際に副業を始める際は、現在勤めている会社の就業規則を必ず確認し、必要であれば会社に副業の許可を申請しましょう。
【参考URL】 ※1 出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※2 出典:厚生労働省「副業・兼業の現状」 https://www.mlit.go.jp/common/001223203.pdf ※3 出典:厚生労働省「副業・兼業」最新情報 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※4 出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン改定」 https://www.mhlw.go.jp/content/2023_Pamphlet_TH.pdf
タクシー業務を行うには第二種運転免許が必要です。二種免許とは、有償で旅客を運送するための免許で、バス・タクシー運転手に必須の資格です。この免許を取得するには、原則として21歳以上で、かつ普通自動車免許等を取得後3年以上の運転経験が必要と定められてきました(※5)。
しかし、運転者不足の解消と若年層の参入促進のため、2022年5月に道路交通法施行令が改正され、一定の条件下で要件が緩和されています(※6)。具体的には、所定の教習課程を修了すれば19歳以上かつ運転経験1年以上でも二種免許を受験可能となり、運転経験要件も最短1年まで引き下げられました(※7)。最新の条件では「原則:21歳・経験3年以上/特例:19歳・経験1年以上(要教習修了)」となっています。
二種免許の取得方法は2通りあります。自動車教習所で二種免許コースを受講して試験を受けるルートと、タクシー会社に採用後、会社負担で合宿免許取得させてもらうルートです。費用は教習所にもよりますが20~30万円程度が目安で、試験は学科・技能とも一種免許より難易度が上がります。なお視力や深視力など身体条件も厳しくチェックされます。自信のない方は教習所で十分練習するとよいでしょう。
二種免許取得後はタクシー会社に登録して乗務員として働く形になります。個人でマイカーを使ってタクシー営業すること(いわゆる白タク行為)は道路運送法違反となるため認められません。必ずタクシー事業の許可を持つ会社に所属し、事業用の緑ナンバー車両で営業する必要があります。副業として週末や夜間だけ働きたい場合でも、対応してくれる会社を探して契約を結ぶ流れです。
副業でタクシー運転手になる場合、勤務形態は定時制乗務員や嘱託乗務員となります。定時制の場合、月間の乗務回数が正社員の半分程度(最大でも月13乗務前後)に制限されます。例えば週末だけ勤務したり、月に数回夜勤専門で入るといった柔軟な働き方が可能です。求人募集では「Wワーク可」「副業OK」「週1日~勤務可」などと明記されている会社を選ぶとよいでしょう。
副業としてタクシーをする場合の収入は歩合給である点に注意が必要です。多くのタクシー会社では運賃収入に応じた歩合制給与となっており、副業の場合も自分の営業成績次第で収入が決まります。例えば週末だけ4~5時間程度の夜間勤務を行った場合、月に数万円から十数万円の副収入になるケースが多いようです。安定した副収入を得るには繁華街や駅周辺で効率よく営業するコツや配車アプリを活用して乗客を効率的に確保する工夫がポイントです。
【参考URL】 ※5 出典:国土交通省「旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件」 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000344.html ※6 出典:国土交通省「第二種運転免許の受験資格要件に関する改正」 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000344.html ※7 出典:国土交通省「運転者要件見直しに関する政令改正」 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000344.html
副収入で生活に余裕が生まれるのがタクシードライバーの副業最大のメリットです。本業のタクシー収入は天候や景気、繁閑によって変動することがありますが、副業で得た収入があればそれを補填し、家計にゆとりをもたらすことができます。副業で毎月数万円でも収入が増えれば、将来への備えや貯蓄もぐっとしやすくなるでしょう。
柔軟な働き方・空き時間の有効活用も大きな魅力です。タクシードライバーという仕事自体がシフトの融通が利きやすく、休日も多い職業です。他の職種と比べまとまった空き時間を確保しやすいため、その時間を副業に充てられるのは大きなメリットです。例えば隔日勤務の場合、月に約15日程度が非勤務日となります(※8)。この多くの非番日を趣味や休息に使うだけでなく、副業に活用すれば時間の有効活用になります。
スキルアップと自己成長につながる点も見逃せません。副業は単にお金を稼ぐ手段にとどまらず、自己研鑽やスキルアップの機会にもなります(※9)。例えば、タクシードライバーが副業でWebライターをすれば文章力や情報収集力が磨かれ、本業での接客トークに活かせるかもしれません。プログラミングを学んで副業を始めればITリテラシーが向上し、配車アプリ操作にも慣れるでしょう。厚生労働省のガイドラインでも、副業・兼業には「自身の能力を発揮しスキルアップを図るメリット」があるとされています(※10)。
人脈拡大と新たなチャンスも期待できます。タクシー副業を通じて新たな人脈ができることもメリットの一つです。本業では出会わない異業種の人々と関わることで、思わぬチャンスが舞い込む可能性があります。複数のコミュニティに属することで情報収集力が高まり、結果的にタクシー業務にも良い影響を与える好循環が生まれます。
セカンドキャリアへの備えとしても有効です。タクシードライバーは定年後も続けやすい仕事ですが、それでも長期的なキャリアを考えると将来の選択肢を増やしておきたいものです。副業で別の職種・技能に取り組んでおけば、いざという時にセカンドキャリアとして本格転向することも容易になります。政府も「多様なキャリア形成」の観点から副業を推奨しています(※11)。
【参考URL】 ※8 出典:国土交通省「タクシー乗務の勤務形態(隔日勤務の休養要件)」 https://www.mlit.go.jp/common/001223203.pdf ※9 出典:厚生労働省「副業のメリット(能力発揮・スキルアップ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※10 出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※11 出典:厚生労働省「多様なキャリア形成と副業推進」 https://www.mlit.go.jp/common/001223203.pdf
会社規則違反のリスクがまず挙げられます。前述のとおり多くの企業で副業解禁が進んでいますが、依然として副業禁止または許可制を採用している会社もあります。自社が副業NGの場合、黙って副業をすると懲戒処分の対象になりかねません。タクシー会社によっては「副業する場合は事前申請せよ」と定めているところもありますし、競合他社での乗務を禁じるケースもあります。必ず事前に自社のルールを確認し、必要な手続きを踏むことが重要です(※12)。
労働時間の管理と健康への配慮が欠かせません。副業を始めると、どうしても労働時間が長くなり、体力・健康面の負担が増します。タクシードライバーの仕事は長時間勤務や深夜勤務も多く、疲労が蓄積しやすい職業です。その上に副業を重ねると過労によって健康を害したり、本業の安全運転に支障を来す恐れがあります(※13)。厚労省ガイドラインでも「副業による過労で健康を損ねたり業務に支障が出ないよう、労働者自ら本業と副業の労働時間・健康状態を管理する必要がある」と強調されています(※14)。
確定申告と税金の手続きにも注意が必要です。給与所得者の副業で年間20万円超の所得(経費差引後利益)がある場合、会社の年末調整とは別に自分で確定申告を行う必要があります(※15)。例えば副業で年間50万円稼いだ場合、その分の所得税・住民税を申告納税しなければなりません。20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要になるケースがあります。
必要な資格・許可の確認も重要です。副業の種類によっては事前に取得すべき資格や許可があります。タクシー運転手が選ぶ副業として多い貨物配送では、貨物軽自動車運送事業の届け出が必要になる場合があります。また、第二種電気工事士や宅地建物取引士など資格が求められる副業もあります。自分の始めたい副業に法律上の資格要件がないか事前に調べましょう(※16)。
情報漏洩・機密保持への配慮が求められます。副業先で知り得た情報を不用意に扱うと情報漏洩のリスクがありますし、逆に本業のタクシー会社の営業情報を副業先で口外するのも厳禁です。職場ごとの守秘義務を守り、信頼を損なわないよう注意が必要です。SNSでの発信にも注意し、本業の会社やお客様に迷惑をかけないことを常に意識しましょう。
ワークライフバランスの悪化にも要注意です。収入を増やしたいあまり、休みなく働いてしまうと私生活の時間が減少します。家族や友人との時間が取れなかったり、自分の趣味や休養の時間がなくなれば精神的なストレスが蓄積します。本業あっての副業であることを忘れず、オフの時間も大切にしてください。
【参考URL】 ※12 出典:厚生労働省「副業開始時の留意点(就業規則遵守)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※13 出典:厚生労働省「副業による過労防止と健康管理」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※14 出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※15 出典:厚生労働省「副業収入と確定申告(20万円超)」 https://www.mlit.go.jp/common/001223203.pdf ※16 出典:国土交通省「貨物運送の許可不要範囲」 https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000354743.pdf
タクシードライバーが副業を選ぶ際は、本業の経験・強みを活かせるか、時間や体力の負担が適切か、そして本業と競合しないかを基準に考えましょう(※17)。ここではタクシードライバーに向いている具体的な副業例をいくつか紹介します。
運転スキルや土地勘など、タクシー業で培った能力を活かせる副業です。Uber Eatsや出前館といったフードデリバリーの配達パートナー、また軽貨物宅配は、自分の空き時間に働ける点でタクシードライバーとの相性が良好です。
タクシードライバーは地理に詳しく、運転にも慣れているため効率よく配達ルートを組める利点があります。また夜間や早朝など、本業の乗務シフト外の時間帯にデリバリー需要が高まるサービスも多く、時間帯をずらして働けます。
ただし過重労働に注意が必要です。乗務の合間にデリバリーを詰め込みすぎると疲労が蓄積します。また交通ルール遵守は本業同様大前提です。自家用車で有償運送する際は旅客運送(白タク)にならないよう貨物限定であること、及び必要な手続を済ませておくことが重要です(※18)。
インターネットを通じて完結できる仕事は、タクシー乗務の合間に在宅でできる副業として魅力的です。Webライター、ブログ運営、データ入力、簡易なプログラミングやデザインなど、スキルや興味に合わせて多様な案件に取り組めます。
場所や時間を選ばず取り組めるため、タクシー業務の空き時間を有効活用できます。身体的負担が比較的少なく、パソコン一台あれば始められる手軽さもメリットです。
ただし自己管理が求められます。納期に追われて睡眠時間を削ることのないよう、本業優先でスケジュール管理を行いましょう。最初は小さな仕事から始め、無理なく継続できる範囲で受注しましょう。
インターネット上で物を売る副業も、時間と場所を選ばず始められます。ネットオークションやフリマアプリで不要品を販売したり、ハンドメイド作品や趣味の商品をECサイトで販売する方法です。
タクシー業の合間に商品撮影や出品作業を行ったり、非番日にまとめて発送作業をするなど、マイペースで運用できます。売れる商品の相場を読む力や接客経験は、タクシー乗務で培った洞察力・会話力が活きる場面もあります。
在庫リスクや初期投資に注意しましょう。仕入れて売る場合、売れ残り在庫を抱える可能性があります。副業として無理なく続けるために、小規模から始め、利益管理をしっかり行うことが重要です。
タクシードライバーの副業として不動産投資や株式投資などの資産運用も選択肢の一つです。直接「働く」副業ではありませんが、資金を運用することで将来的なリターンを狙うタイプの副業と言えます。
タクシー運転手として日頃街を走っていると、土地勘や地域の需要に詳しくなります。この知識は不動産投資(物件選定や駐車場ニーズの見極め)に役立ちます。一度軌道に乗れば比較的安定した収入が期待でき、将来の資産形成にもつながります。
初期資金やローンを組む必要があるためリスクも伴います。不動産市況の変動で空室が出れば収入が減りますし、固定資産税など維持費も考慮しなくてはなりません。本業収入に影響しない範囲の資金で慎重に運用を行いましょう。
タクシードライバーの接客経験や安全運転の知識を活かし、新人研修の講師や接客マナー講師といった仕事を副業にする例もあります。また、全く別分野で家庭教師や塾講師、語学のオンラインチューターをするドライバーもいます。
タクシーで培った対人コミュニケーション能力やサービス精神は、教育・指導の現場で強みになります。例えば長年タクシー乗務で培った接客ノウハウを活かして接客研修の講師を務めたり、運転が得意ならペーパードライバー講習の指導員を副業で請け負うことも考えられます。
高い専門性が求められるため、実績作りや信用の確保が課題になります。副業とはいえ受講生や生徒に対してはプロ意識を持って臨むことが求められます。
タクシードライバーの業務そのものをコンテンツ化して情報発信で収益化する方法もあります。ブログやYouTubeチャンネルでタクシー業界の裏話や観光地案内、運転テクニックなどを発信したり、ドライブ中に撮影した写真をストックフォトとして販売する方法です。
日々の乗務でネタが豊富に手に入る点が強みです。タクシー乗務中の出来事や街のトレンド情報、お得スポット紹介など、一般の人が知らない情報を発信すれば多くの人の興味を惹くことができます。
収益化まで時間がかかる点に注意です。ブログや動画配信はファンを増やし一定のPV数・視聴時間を稼ぐまで収入はほぼゼロのため、短期的な収入源にはなりにくいです。乗客のプライバシーに関わる内容や、勤め先の内部情報などは絶対に公開しないよう細心の注意を払いましょう。
【参考URL】 ※17 出典:厚生労働省「モデル就業規則解説(競業避止義務の範囲)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html ※18 出典:国土交通省「道路運送法に関する資料(貨物運送の許可不要範囲)」 https://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/content/000354743.pdf
タクシードライバーは副業しやすい恵まれた環境にあります。法律上も問題なく、国の後押しも受けて副業解禁の追い風が吹いています。本業と両立するためには会社のルール遵守と健康管理が肝心ですが、適切に計画すれば収入アップやスキル向上など多くのメリットを享受できます。
副業にはデリバリーやオンライン仕事など様々な選択肢があり、自身の希望に合った働き方を選べます。一方で過重労働や税務手続きなどの注意点も忘れず、無理のない範囲で取り組むことが長続きの秘訣です。
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