最終更新日:2025年12月15日

タクシー運転手として働くためには、普通自動車第二種運転免許(二種免許)の取得が必須ですが、東京都や大阪府などの特定地域では、さらに「地理試験」に合格する必要があります(※1)。この地理試験は、タクシー運転手として乗客を安全かつ効率的に目的地まで送り届けるために、地域の道路や主要施設、最短ルートなどの知識を問うものです。
地理試験と聞くと「難しそう」「覚えることが多くて大変そう」と感じる方も多いかもしれません。しかし、適切な勉強方法と計画的な準備を行えば、初めての方でも十分に合格を目指すことができます。
本記事では、タクシー運転手を目指す方に向けて、地理試験の基礎知識から受験方法、合格率、効果的な勉強方法、免除条件まで、地理試験に関するあらゆる情報を詳しく解説します。これからタクシー業界への転職を考えている方、すでに二種免許を取得して地理試験の受験を控えている方は、ぜひ最後までお読みください。
タクシー運転手として営業運転を行うためには、道路運送法に基づく「運転者登録」を受ける必要があります。この運転者登録を受けるための要件の一つとして、特定の地域では「地理試験」への合格が義務付けられています。
地理試験は、正式には「地理に関する試験」と呼ばれ、タクシー運転者として必要な地域の地理的知識を測定するための試験です。試験では、営業区域内の主要な道路、交差点、公共施設、観光地、駅、ホテルなどの位置関係や、効率的な経路選択に関する知識が問われます。
この試験が設けられている背景には、タクシーが公共交通機関としての役割を担っており、利用者に対して安全で迅速なサービスを提供する必要があるという考え方があります。地理試験に合格することで、運転手は乗客から目的地を告げられた際に、適切なルートを選択し、円滑に目的地まで送り届けることができる最低限の知識を持っていることが証明されます。
特に東京都のような大都市圏では、道路網が複雑で、主要施設や観光地も数多く存在するため、地理試験の重要性は非常に高いといえます。また、カーナビゲーションシステムが普及している現代においても、システムの不具合や渋滞時の臨機応変な対応、お客様との会話の中での適切な情報提供など、運転手自身が地理知識を持っていることは依然として重要です。
地理試験は、タクシー運転手としての専門性を示す重要な資格要件の一つとして位置づけられており、合格することで初めて営業運転が可能になります。
【参考URL】 ※1 出典:国土交通省「タクシーに関する制度等の見直しについて」 https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha03_hh_000072.html
タクシー運転手として働くにあたり、地理試験の受験が必要かどうかは、営業区域によって異なります(※2)。日本全国すべての地域で地理試験が必須というわけではなく、特定の地域に限定されています。
地理試験の受験が義務付けられているのは、国土交通省が指定する「特定地域」です。2024年12月現在、地理試験が必要な主な地域は以下の通りです。 ・東京都の特別区(23区)および武蔵野市、三鷹市 ・神奈川県の横浜市、川崎市、横須賀市、三浦市 ・大阪府の大阪市、堺市を含む一部地域
これらの地域は、人口が密集しており、道路網が複雑で、多くの主要施設や観光地が存在するため、タクシー運転手に高度な地理知識が求められます。特に東京都の特別区は、日本で最も厳格な地理試験が実施されている地域として知られています。
東京都の地理試験を管轄しているのは「一般財団法人東京タクシーセンター」であり、神奈川県は「神奈川県タクシーセンター」、大阪府は「大阪タクシーセンター」がそれぞれ試験を実施しています。各地域によって試験の内容や難易度、合格基準が若干異なるため、自分が働く予定の地域の試験内容を事前に確認することが重要です。
上記の特定地域以外の地域では、基本的に地理試験の受験は不要です。例えば、以下のような地域では地理試験なしでタクシー運転手として働くことができます。
・北海道(札幌市を含む) ・東北地方の各都市 ・名古屋市を含む愛知県 ・京都府(京都市を含む) ・福岡市を含む九州地方 ・その他の地方都市
これらの地域では、二種免許を取得し、タクシー会社に就職すれば、地理試験なしで運転者登録を受けることができます。ただし、会社によっては独自の研修や地理に関する社内試験を実施している場合もあります。
地理試験が不要な地域でタクシー運転手を目指す場合、受験準備の負担が軽減されるため、比較的早く営業運転を開始できるというメリットがあります。一方で、地理試験が必要な地域は大都市圏が中心であり、営業収入が高い傾向にあるため、収入面でのメリットも考慮する必要があります。
自分がどの地域で働きたいのか、地理試験の有無がキャリアプランにどう影響するのかを総合的に判断することが大切です。
【参考URL】 ※2 出典:国土交通省「タクシー事業者等に関する各種統計データ」 https://www.mlit.go.jp/common/001105061.pdf
地理試験を受験するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、受験資格と具体的な申し込み方法について詳しく解説します。
地理試験を受験するための主な要件は以下の通りです(※3)。
1.普通自動車第二種運転免許(二種免許)を取得していること 地理試験を受験する前提として、二種免許の取得が必須です。二種免許は、旅客を運送する営業用の車両を運転するために必要な免許であり、タクシー運転手になるためには必ず取得しなければなりません。
2.年齢要件 二種免許の取得には満21歳以上であることが条件となっています。したがって、地理試験も実質的に21歳以上でなければ受験できません。
3.普通自動車第一種運転免許の保有期間 二種免許を取得するためには、普通自動車第一種運転免許を取得してから通算3年以上(免許停止期間を除く)経過している必要があります。
4.健康状態 視力、聴力、色彩識別能力などの身体的要件を満たしている必要があります。これらは二種免許取得時に確認されます。
これらの要件を満たしていれば、地理試験の受験申し込みが可能です。なお、タクシー会社に就職が内定している必要はなく、個人で受験することも可能です。
地理試験の申し込み方法は、各地域のタクシーセンターによって若干異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。
東京都の場合(東京タクシーセンター) 1.申込書の入手 東京タクシーセンターのウェブサイトから申込書をダウンロードするか、センター窓口で直接入手します。
2.必要書類の準備 ・地理試験受験申込書(写真貼付) ・二種免許のコピー ・住民票の写し(本籍地記載、マイナンバー記載なし、3か月以内発行) ・受験手数料(現金または振込)
3.申し込み 郵送または窓口で申し込みます。受験日の約2週間前までに申し込む必要があります。
4.受験票の受領 申し込みが受理されると、受験票が郵送されます。受験票には試験日時、会場、持ち物などが記載されています。
神奈川県、大阪府の場合 基本的な流れは東京都と同様ですが、詳細は各タクシーセンターのウェブサイトや窓口で確認してください。受験手数料や必要書類が若干異なる場合があります。
地理試験の受験手数料は地域によって異なりますが、一般的には以下の通りです。
・東京都 :約7,000円~8,000円 ・神奈川県:約6,000円~7,000円 ・大阪府 :約6,000円~7,000円
受験手数料は変更される可能性があるため、申し込み前に最新の情報を確認することをお勧めします。
地理試験は、各タクシーセンターが定期的に実施しています。東京都の場合、月に数回程度の頻度で試験が行われています。試験会場は各タクシーセンターの指定する場所で、通常はセンターの施設内または近隣の会議室などが使用されます。
試験日程はウェブサイトで公開されているため、自分の都合に合わせて受験日を選択できます。ただし、繁忙期には申し込みが集中することがあるため、早めの申し込みをお勧めします。
【参考URL】 ※3 出典:国土交通省関東運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)を始めるには」 https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/taxi_jigyoukaisi/date/20210101_7.pdf
地理試験では、具体的にどのような問題が出題されるのでしょうか。ここでは、試験の形式、出題範囲、問題の種類について詳しく解説します。
地理試験は、基本的に「筆記試験」の形式で実施されます。試験時間は地域によって異なりますが、東京都の場合は約40分間です。問題数は全40問で、マークシート方式または記述式で解答します。
試験問題は、地図を用いた問題と文章による問題の両方が出題されます。特に地図問題では、営業区域内の地図が提示され、指定された地点間の最短ルートを選択したり、特定の施設の位置を答えたりする問題が中心となります。
地理試験の出題範囲は、営業区域内の地理的知識全般に及びます(※4)。具体的には以下のような内容が含まれます。
1.主要道路と交差点 ・幹線道路の名称と位置・主要交差点の名・一方通行や進入禁止などの交通規制 ・高速道路のインターチェンジやジャンクション
2.公共施設 ・官公庁(区役所、市役所、税務署など) ・警察署、消防署 ・郵便局 ・公立病院
3.交通機関 ・鉄道駅(JR、私鉄、地下鉄) ・バスターミナル ・空港、港湾
4.商業施設・宿泊施設 ・主要なホテル ・大型商業施設 ・コンベンションセンター
5.観光地・文化施設 ・神社仏閣 ・美術館、博物館・公園 ・観光名所
6.教育機関 ・主要な大学 ・専門学校
7.医療機関 ・大規模病院 ・救急医療センター
8.その他 ・大使館・企業の本社ビル・ランドマーク的な建造物東京都の場合、特別区(23区)および武蔵野市、三鷹市が試験範囲となります。この広範囲の地理情報を把握する必要があるため、計画的な学習が重要です。
地理試験では、主に以下のような種類の問題が出題されます。
1.地図上の位置確認問題 地図上で特定の施設や交差点がどこに位置するかを問う問題です。例えば、「東京タワーは地図上のどの位置にあるか」といった形式です。
2.最短ルート選択問題 出発地点と目的地が指定され、複数のルートの中から最短または最適なルートを選択する問題です。道路の幅員、交通規制、渋滞しやすい時間帯なども考慮する必要があります。
3.施設名と所在地の照合問題 施設名が提示され、その施設がどの区や地域にあるかを答える問題です。例えば、「国立競技場は何区にあるか」といった問題です。
4.道路名称問題 地図上に示された道路の名称を答える問題や、特定の道路がどこを通っているかを問う問題です。
5.交通規制に関する問題 一方通行、右折禁止、進入禁止などの交通規制について、どの場所で適用されているかを問う問題です。
6.距離・所要時間の推定問題 2地点間の距離や、標準的な所要時間を推定する問題です。これは実際の営業で料金見積もりに役立つ知識です。
地理試験の内容は地域によって異なります。東京都は範囲が広く、出題される施設の数も多いため、最も難易度が高いとされています。神奈川県や大阪府も大都市圏ですが、東京都に比べると範囲がやや限定的です。
各地域の特徴を踏まえた学習計画を立てることが、効率的な試験対策につながります。
【参考URL】 ※4 出典:国土交通省「タクシー事業の現状とこれからの方向性について」 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001744263.pdf
地理試験の難易度は、受験者にとって大きな関心事の一つです。ここでは、合格率の実態と試験の難易度について詳しく見ていきます。
地理試験の合格率は、地域や時期によって変動しますが、全国的に見ると決して高いとは言えません。公表されているデータによると、合格率は年度によって異なりますが、おおむね30%~50%程度で推移しています。
東京都の合格率 東京タクシーセンターが実施する地理試験の合格率は、年度によって異なりますが、おおむね30%~50%程度で推移しています。つまり、受験者の半数以上が不合格となるケースも珍しくありません。
特に初回受験者の合格率は30%前後とされており、一発合格は容易ではないことがわかります。ただし、再受験者を含めた累積合格率を見ると、最終的には多くの受験者が合格しています。
神奈川県・大阪府の合格率 神奈川県や大阪府の地理試験も、東京都と同様に合格率は30%~50%程度とされています。地域によって若干の差はありますが、いずれも簡単な試験ではないことがわかります。
地理試験の合格基準は、正答率によって決まります。一般的には以下のような基準が設けられています。
・東京都 :40問中32問以上正解(正答率80%以上) ・神奈川県:同様に80%程度 ・大阪府 :同様に80%程度
つまり、ほとんどの問題に正解する必要があり、わずかなミスも許されない厳しい基準となっています。この高い合格基準が、合格率の低さにつながっています。
地理試験の合格率が低い理由としては、以下のような要因が考えられます。出題範囲の広さ 東京都の場合、23区全域に加えて武蔵野市、三鷹市が範囲となるため、覚えるべき道路、施設、地名が膨大です。
1.詳細な知識が求められる 大まかな位置を知っているだけでは不十分で、具体的な交差点名、通りの名称、施設の正確な所在地など、詳細な知識が必要です。
2.地図の読み取り能力 地図上で正確に位置を特定したり、最短ルートを判断したりする能力が求められます。普段から地図に慣れていない人には難しく感じられます。
3.交通規制の把握 一方通行や進入禁止など、実際に運転していなければわからない交通規制に関する知識も必要です。
4.高い合格基準 80%という合格基準は、他の多くの試験と比較しても高い水準です。
5.準備不足 タクシー会社に就職が決まってから受験する人が多く、仕事を始める前の限られた時間で準備をするため、十分な学習時間を確保できないケースもあります。
実際に地理試験を受験した人の感想としては、「思ったより難しかった」「覚えることが多くて大変だった」という声が多く聞かれます。特に、東京都以外から転居してきた人や、普段あまり都心部を運転しない人にとっては、土地勘がないため苦労するケースが多いようです。
一方で、「しっかり勉強すれば合格できる」「参考書と過去問を繰り返せば十分」という前向きな意見もあります。実際、計画的に学習を進めた人の多くは、2回目の受験で合格しているというデータもあります。
地理試験に不合格となった場合、再受験が可能です。再受験の回数に制限はありませんが、受験のたびに受験手数料が必要となります。
再受験までの期間は特に定められていませんが、通常は次回の試験日程に合わせて再度申し込むことになります。不合格の原因を分析し、弱点を補強してから再受験することが合格への近道です。
多くのタクシー会社では、就職後も地理試験に合格するまでサポートを続けてくれます。社内研修や先輩ドライバーからのアドバイスなどを活用しながら、合格を目指しましょう。
地理試験に合格するためには、効率的な勉強方法を実践することが重要です。ここでは、具体的な学習方法とコツを紹介します。
地理試験の勉強は、以下のような流れで進めるのが効果的です。
1. 公式テキストの入手と通読 まずは各タクシーセンターが発行している公式のテキストや参考書を入手しましょう。東京タクシーセンターでは「タクシー地理試験練習問題集」などが販売されています。これらの公式教材には、試験に出題される範囲が網羅されています。
最初は全体を通読し、どのような内容が出題されるのか、範囲の広さを把握することから始めます。
2. 地図の理解 地理試験では地図の読み取りが重要です。営業区域の地図を用意し、主要な道路、駅、施設の位置関係を視覚的に理解しましょう。
紙の地図だけでなく、Google MapsやGoogle Earthなどのデジタル地図も活用すると、より立体的に地域を理解できます。
3. 重要施設の暗記 試験によく出題される重要施設をリストアップし、その所在地を暗記します。施設は以下のようにカテゴリー別に整理すると覚えやすくなります。
・官公庁(区役所、税務署など) ・駅(JR、私鉄、地下鉄) ・主要ホテル ・観光地 ・大使館 ・病院
4. 道路と交差点の学習 主要道路の名称と、重要な交差点の位置を覚えます。特に幹線道路については、どの地域を通過し、どの駅や施設の近くを通っているかを関連づけて覚えると効果的です。
5. 過去問題の繰り返し 過去に出題された問題や、公式問題集の練習問題を繰り返し解きます。同じ問題を何度も解くことで、出題傾向や頻出ポイントが見えてきます。
最初は解答を見ながらでも構いません。正解とその理由を理解することが大切です。慣れてきたら、時間を計って本番と同じ条件で解いてみましょう。
6. 弱点の補強 模擬試験や過去問を解いて、自分が苦手な分野を特定します。苦手な分野は集中的に学習し、克服していきます。
地理試験では膨大な量の情報を暗記する必要があります。以下の方法を活用して、効率的に記憶を定着させましょう。
1. 関連づけて覚える 単独で覚えるのではなく、複数の情報を関連づけて覚えると記憶に残りやすくなります。例えば、「渋谷区にある施設」「山手線沿線の主要駅」というようにグループ化します。
2. 実際に訪れる 可能であれば、実際にその場所を訪れてみましょう。視覚的な記憶は、文字だけの記憶よりも強く残ります。休日を利用して、試験範囲内の主要な場所を巡ってみるのも良い学習方法です。
3. 語呂合わせやストーリー 覚えにくい情報は、語呂合わせやストーリーを作ると記憶しやすくなります。
4. 反復学習 人間の記憶は時間とともに薄れていくため、定期的に復習することが重要です。学習した内容は、翌日、1週間後、1か月後というように間隔を空けて復習すると、長期記憶として定着します。
5. 声に出して読む 黙読だけでなく、声に出して読むことで、視覚と聴覚の両方から記憶に刻み込むことができます。
現代では、スマートフォンやタブレットを活用した学習も効果的です。
1. 地図アプリ Google MapsやYahoo!地図などのアプリを使って、通勤時間や空き時間に地理を確認できます。ストリートビューを使えば、実際にその場所を訪れたような感覚で学習できます。
2. 暗記アプリ Anki、Quizletなどの暗記カードアプリを使って、施設名と所在地をセットで覚える練習ができます。
3. オンライン教材 YouTubeなどには、タクシー地理試験の対策動画がアップロードされていることがあります。こうした動画教材も活用すると、理解が深まります。
地理試験の勉強は、計画的に進めることが成功の鍵です。
1. 試験日から逆算する 試験日が決まったら、そこから逆算して学習計画を立てます。最低でも1~2か月の学習期間を確保することをお勧めします。
2. 毎日の学習時間を決める 毎日決まった時間を学習に充てることで、習慣化しやすくなります。1日2~3時間程度の学習が理想ですが、仕事や家庭の事情で時間が取れない場合は、30分でも1時間でも構いません。短い時間でも継続することが大切です。
3. 週ごとの目標を設定する 例えば、「第1週:地図全体の把握と主要道路の学習」「第2週:23区の区役所と主要駅の暗記」というように、週ごとに具体的な目標を設定します。
4. 模擬試験で実力チェック 本番の1~2週間前には、模擬試験を実施して実力をチェックします。合格ラインに達していない場合は、残りの期間で弱点を重点的に補強します。
多くのタクシー会社では、地理試験対策として様々なサポートを提供しています。
・社内研修プログラム・先輩ドライバーによる指導・学習教材の貸与・試験対策講座の開催
就職が決まっている場合は、会社のサポートを積極的に活用しましょう。先輩ドライバーの経験談は、参考書だけでは得られない実践的な知識を提供してくれます。
地理試験は、一定の条件を満たす場合には受験が免除されることがあります(※5)。ここでは、免除条件について詳しく解説します。
地理試験の免除は、法令や各タクシーセンターの規定に基づいて認められます。主な免除条件は以下の通りです。
1. 実務経験による免除 特定地域で一定期間以上のタクシー運転手としての実務経験がある場合、地理試験が免除されることがあります。具体的には以下のような条件です。
・同一営業区域内で10年以上の実務経験がある場合 ・過去に当該地域の地理試験に合格した経歴があり、一定期間内(通常5年以内)に再度運転者登録を行う場合
ただし、長期間のブランクがある場合や、道路事情が大きく変化している場合は、再受験を求められることもあります。
2. 他地域での合格実績 既に別の特定地域で地理試験に合格している場合、一部の試験内容が免除されたり、簡易な試験で済む場合があります。ただし、完全免除となるケースは少なく、通常は新たに受験する地域の試験を受ける必要があります。
3. 特定の資格保有者 一部の地域では、特定の資格を持っている場合に地理試験の一部または全部が免除されることがあります。例えば、観光ガイド資格や地域の歴史・文化に関する専門資格などです。ただし、このような免除制度は限定的であり、すべての地域で適用されるわけではありません。
4. 法令改正による経過措置 法令の改正や制度変更があった場合、一定期間の経過措置として免除が認められることがあります。ただし、これは特定の時期に限定された措置です。
地理試験の免除を受けるためには、所定の申請手続きが必要です。
1. 免除要件の確認 まず、自分が免除要件を満たしているかを確認します。各タクシーセンターのウェブサイトや窓口で、免除条件の詳細を確認できます。
2. 必要書類の準備 免除申請には、以下のような書類が必要となります。
・免除申請書・実務経験を証明する書類(雇用証明書、運転者証の写しなど) ・過去の地理試験合格証明書(該当する場合) ・その他、免除理由を証明する書類
3. 申請手続き 必要書類を揃えて、タクシーセンターに申請します。審査には一定の期間がかかるため、余裕を持って申請することをお勧めします。
4. 審査結果の通知 審査の結果、免除が認められた場合は、免除証明書が発行されます。この証明書があれば、地理試験を受験せずに運転者登録を行うことができます。
地理試験の免除を受ける際には、以下の点に注意が必要です。
1. 免除条件の厳格性 免除条件は厳格に定められており、わずかでも条件を満たしていない場合は免除が認められません。不明な点があれば、必ず事前にタクシーセンターに確認しましょう。
2. 地理知識の重要性 免除を受けた場合でも、実際の営業運転では地理知識が必要不可欠です。免除だからといって地理の勉強を怠ると、営業開始後に苦労することになります。
3. 地域ごとの違い 免除条件は地域によって異なる場合があります。複数の地域で働く可能性がある場合は、それぞれの地域の免除条件を確認してください。
実務経験があり免除を受けられる状況でも、あえて地理試験を受験するという選択肢もあります。試験勉強を通じて地理知識をアップデートできるというメリットがあるためです。
特に、長期間のブランクがある場合や、道路事情が大きく変化している場合は、試験を受験することで最新の地理情報を習得できます。
一方、免除を受けられる場合は時間と費用の節約になるため、実務経験が十分にあり、現在の地理知識にも自信がある場合は免除を選択するのが合理的です。
自分の状況と今後のキャリアプランを考慮して、最適な選択をしましょう。
【参考URL】 ※5 出典:内閣官房「デジタル臨時行政調査会 作業部会 中間報告」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/pdf/chukan_honbun.pdf
地理試験は、タクシー運転手になるためのステップの一つです。ここでは、タクシー運転手になるまでの全体的な流れを確認しておきましょう。
タクシー運転手として働き始めるまでには、以下のようなステップがあります(※6)。
ステップ1:普通自動車第二種運転免許(二種免許)の取得 タクシー運転手になるための最初のステップは、二種免許の取得です。二種免許を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
・年齢:満21歳以上 ・一種免許の保有期間:通算3年以上(免許停止期間を除く) ・視力:両眼で0.8以上、かつ一眼でそれぞれ0.5以上 ・深視力:3回の平均誤差が2センチメートル以内 ・聴力:10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえる ・色彩識別:赤色、青色、黄色の識別ができる
二種免許は、教習所に通って取得する方法と、一発試験で取得する方法があります。教習所の場合、普通一種免許を持っていれば約20~30万円、2週間~1か月程度で取得できます。
ステップ2:タクシー会社への就職 二種免許を取得したら、タクシー会社に就職します。最近では、二種免許取得費用を会社が負担してくれる「二種免許取得支援制度」を設けている会社も多く、費用面でのサポートを受けられる場合があります。
タクシー会社を選ぶ際は、給与体系、勤務形態、研修制度、福利厚生などを比較検討しましょう。
ステップ3:地理試験の受験(特定地域の場合) 特定地域でタクシー運転手として働く場合は、地理試験に合格する必要があります。多くの場合、就職後に会社のサポートを受けながら試験対策を行います。
ステップ4:タクシー運転者証の取得 地理試験に合格したら、次は「タクシー運転者証」を取得します。タクシー運転者証は、タクシー運転手として営業運転を行うために必要な証明書です。
タクシー運転者証を取得するためには、以下の手続きが必要です。
・運転者登録申請書の提出 ・二種免許の提示 ・地理試験合格証明書の提示(特定地域の場合) ・適性診断の受診 ・写真の提出 ・登録手数料の納付
申請から交付まで通常1~2週間程度かかります。
ステップ5:会社研修の受講 タクシー運転者証を取得したら、会社の研修を受講します。研修では、以下のような内容を学びます。
・接客マナー ・安全運転 ・メーターの操作方法 ・無線機の使い方 ・営業エリアの特性 ・料金体系 ・トラブル対応
研修期間は会社によって異なりますが、通常1週間~1か月程度です。
ステップ6:営業運転の開始 研修を修了したら、いよいよ営業運転を開始します。最初のうちは、先輩ドライバーと同乗しての研修や、短時間の営業から始めることが多いです。
徐々に慣れてきたら、フルタイムでの営業に移行します。
タクシー運転手になるまでの期間は、個人の状況や地域によって異なりますが、おおよそ以下のような目安となります。
・二種免許の取得:2週間~1か月 ・就職活動:数週間~数か月 ・地理試験の準備と受験:1~2か月 ・タクシー運転者証の取得:1~2週間 ・会社研修:1週間~1か月
合計すると、最短で3~4か月、一般的には半年程度で営業運転を開始できることになります。ただし、地理試験に不合格となり再受験が必要な場合は、さらに時間がかかります。
タクシー運転手になるためには、以下のような費用がかかります。
・二種免許取得費用:20~30万円(会社負担の場合もあり) ・地理試験受験料:7,000円~8,000円 ・タクシー運転者証取得費用:数千円 ・適性診断受診料:数千円
合計で30万円前後の費用が必要となりますが、二種免許取得支援制度を利用すれば、自己負担を大幅に減らすことができます。
【参考URL】 ※6 出典:e-Gov「旅客自動車運送事業運輸規則の一部を改正する省令案等に対する意見募集の結果について」 https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000272113
タクシー運転手になるために必要な地理試験について、受験資格から勉強方法、免除条件まで詳しく解説してきました。
地理試験は、東京都や大阪府、神奈川県などの特定地域でタクシー運転手として働く際に必須となる試験です。合格率は30%~50%程度と決して高くはありませんが、計画的な学習と適切な準備を行えば、十分に合格を目指すことができます。
重要なポイントをまとめると、以下の通りです。
・地理試験は特定地域でのみ必要で、全国すべての地域で必須というわけではない ・試験では営業区域内の道路、施設、最短ルートなどの知識が問われる ・合格基準は80%以上と高いため、徹底した準備が必要 ・公式テキスト、地図、過去問を活用した計画的な学習が合格の鍵 ・一定の実務経験がある場合は免除を受けられることもある ・タクシー会社の研修やサポートを積極的に活用すると効果的
地理試験は、タクシー運転手としてのスタートラインに立つための重要な関門です。しかし、これを乗り越えれば、安定した収入とやりがいのある仕事を手に入れることができます。
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